2019年に火災に見舞われたパリのノートルダム大聖堂は12月8日の一般公開再開に向けて準備を進めている。そこで議論されているのが、聖堂への入場の有料化だ。ダティ文化相は、5ユーロ(約820円)の入場料を徴収したい考えを表明したが、フランスではカトリック教会の礼拝堂は基本的に無料となっている。
ダティ氏は、年間7500万ユーロ(約123億円)とみられる入場料収入を宗教遺産の維持に充てたいとしている。「欧州のどこでも、最も注目すべき宗教的建造物への入場には料金が必要」と指摘、「ノートルダムへのすべての観光客の訪問に象徴的な価格を設定し、その収入をすべて宗教的遺産保護に使う」意向を表明した。
世界遺産でもあるこの巨大な建物の建設には約180年の歳月が費やされ、現在ではパリに残る数少ない中世の建造物の一つ。修復には5年を要した。
ダティ氏は信者のミサや礼拝を有料化することは考えていないと明言した。ただ、フランスの記念碑や美術館への「欧州連合(EU)域外からの訪問者に入場券の料金を高くする」考えも検討するとしている。
大聖堂は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録され、市とその運営会社によって管理されている。有料化を巡ってはパリのイダルゴ市長と次期市長を目指すダティ氏の意見が対立している。
現時点では外国人旅行者の意見は分かれており「優れた芸術作品を鑑賞するために入場料を払う美術館と宗教施設は違う」という意見もある。有料化の議論はまだ続いている。(パリ安倍雅信)