【パリ安倍雅信】欧州連合(EU)の欧州議会で10日、信教の自由に対する攻撃が頻繁に起きていることへの認識を欧州議会議員らが共有し、討論を行った。次期欧州委員会は最優先課題の一つにするとしている。「欧州の生活様式の促進」を担当するギリシャ選出のマルガリティス・スキナス欧州委員会副委員長が「欧州における宗教的不寛容の台頭」に特化した大規模な討論会を行った。
スキナス氏は、「欧州は常に、宗教や信念を持つか持たないかのすべての人の権利を保護する」と主張、欧州議会議員に対し、「あらゆる脅迫、攻撃、迫害からあらゆる宗教の信者を守る」という自身の「決意」を改めて表明した。また、EUは、欧州で「(右傾化による)二極化」など、過激主義が増加しており、「EUは、基本的人権を守るという約束を再確認する必要がある」との見解を示した。
パレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスのイスラエル急襲への報復が始まった1年前の2023年10月から24年にかけて、フランスの学校で3600件以上の人種差別的、反ユダヤ主義的行為が記録された。EU全体でもユダヤ人やイスラム教徒に対する差別と憎悪犯罪に関するEU基本権庁(FRA)の調査が今年7月に公表され、12のユダヤ人コミュニティー組織から収集された情報を含め、被害は確実に増加し、一部の組織は400%以上の増加を報告している。
FRAが7月に発表した調査結果によると、回答者の76%が「少なくとも時折、ユダヤ人であることを隠している」という。スキナス氏はまた、「欧州におけるイスラム教徒に対する憎悪の高まり」も非難し、それは「すべての加盟国で憂慮すべきレベルに達している」との認識を示した。
1時間半を超える白熱した議論の後、スキナス氏は「宗教的不寛容とはあらゆる面で戦わなければならないことにわれわれ全員が同意しており、欧州レベルで協力しなければならない」と強調、さらなる「対話と理解」を求めた。
スキナス氏の任期は今年末までで、後任は決定していない。