【パリ安倍雅信】欧州最大規模のユダヤ人コミュニティーを抱えるフランスで、内務省は、パレスチナ・ガザ地区からハマスが、大規模なイスラエルへの襲撃を起こして1年を迎えるに際し、この間、反ユダヤ主義の事件が増え続けている現状を明らかにした。
1年前のハマスによる攻撃で死亡した1200人の中にはフランス国籍者35人が含まれ、人質の行方不明者100人のうち、9人もフランス系ユダヤ人である。
報復としてイスラエル軍が、今日までに4万人以上のガザ市民を殺害する一方、フランスでは在住する60万人のユダヤ人が標的となる反ユダヤ主義事件が急増している。同省防諜局(DNRT)によると、2024年上半期に887件が発生。2023年の同時期と比べて192%増を記録した。現在、特定の宗教に反対する事件のうち67%を「反ユダヤ」が占めている。
反ユダヤ事件の中でも人々を対象とするものが、2022年には50%であったものが、2023年には60%、2024年に63%、のように増加している。
今年1月には、パリ北西部の都市ルヴァロワ・ペレでユダヤ人家庭に雇われていた保育士が、ブドウジュースとワインのボトルに漂白剤を混入する事件が発生。2月には、パリで幼なじみのユダヤ人に反ユダヤ主義の侮辱を浴びせ、背中を6カ所刺す事件が起きた。その他、教育現場での事件が67件、ネット上の暴言も62件報告されている。
反ユダヤ主義事件は、ユダヤ人が最も多く居住しているイル=ド=フランス地域圏で目立ち、2024年で53%を占める。
フランスにはユダヤ教の礼拝堂であるシナゴーグが500カ所あり、特にパリ、リヨン、マルセイユ、トゥールーズなどの大都市に多い。またユダヤ人学校は300校を超える。アラブ系移民に比べて10分の1にしかすぎないユダヤ系住民だが、政界、官界、法曹界、学界、医療界、経済界、言論界の各界に占める割合は非常に多い。
ユダヤ人コミュニティー保護局(SPCJ)によれば、昨年10月7日以降、ユダヤ教を信仰するフランス国民が少なくとも800人イスラエルへ移住した。さらにフランス在住ユダヤ人6440人がイスラエルへの移住申請を準備しているという。
内務省は、フランス国内の反ユダヤ主義事件の増加傾向は長期化しそうだと分析している。