【ウィーン小川敏】ドイツ東部のブランデンブルク州議会選挙は22日、投開票が実施され、与党「社会民主党」(SPD)が躍進する極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)を僅差で抑え、第1党を堅持した。一方、「キリスト教民主同盟」(CDU)は前回選挙(2019年)より得票率を下げ、左翼党から離脱して新党を結成した「ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟」(BSW)の後塵(こうじん)を拝し第4党。ショルツ連邦政権で与党の「緑の党」と「自由民主党」(FDP)は議席獲得に必要な得票率5%の壁を破れず、いずれも州議会議席を失った。
ボイトケ州首相のSPDがなぜAfDを破り、第1党を堅持することができたのか。投票2日前、ボイトケ州首相は「SPDがAfDに敗れて第2党となれば、私は辞任する」と表明し、州国民に「私の政権を維持させたいかどうか」と最後通告を発した。同州を11年間担当してきたボイトケ州首相は人気のある政治家だ。州の経済もドイツ東部ではトップだ。オーストリア国営放送のドイツ特派員は「ブランデンブルク州議会選はボイトケ首相の過去11年間の政治への信任投票だ」と述べていた。
さらにボイトケ首相は連邦政治で批判に晒(さら)されているショルツ首相の選挙応援を断るなど、連邦SPDとの距離を置いた。また暖房法案や大麻の合法化に反対するなど、ショルツ政権の政策に対して批判的な立場を取ってきた。
ショルツ連立政権はSPD、「緑の党」、FDPの連邦レベルでは初の3党連立政権だ。来年秋には連邦議会選挙が待っているが、予算問題から移民対策まで連立政権内の政策の違いから対立が絶えなかった。FDPは東部3州議会で議席がなく、「緑の党」はザクセン州だけで辛うじて議席を確保するといった惨憺(さんたん)たる結果だった。東部3州ではショルツ連立政権は存在しないに等しい。
なお、ブランデンブルク州議会選が終われば、来年の総選挙のキャンペーンが始まる。SPDはショルツ首相を次期総選挙でも党筆頭候補者にするか否かで、SPD内の議論はさらに熱を帯びてくるのは必至だ。