【パリ安倍雅信】右派・国民連合(RN)に支持が集まったのは、一つには、マクロン政権への不満がある。2017年に右でも左でもない中道を掲げて登場したマクロン氏と自身が設立した中道政党、共和国前進が政権を担って以来の経済政策「マクロニスム」は不評で、RNがその不満票の受け皿になった。富裕税廃止、社会労働政策改革、年金改革による格差の拡大を非難する有権者が増えたことは何度も指摘されてきた。
通常なら、その不満票は左派政党へ流れるところだが、2017年までのオランド政権で左派に見切りをつけた有権者はRNに流れた。実際、左派の教員組合が支配する教師の20%以上が22年の大統領選の第1回投票で、急進右派のRNやレコンキスタ党に投票した。「古臭いマルクス主義や労働組合主義にはうんざり」と語る教師もいた。
ストラスブール科学院のベンジャマン・シュバリエ准教授は仏政治専門誌マリアンヌで、移民系生徒の急増で多様性への対応に教師が直面する中、教員組合の組織率低下、左翼過激教師の減少で政治イデオロギーは影を潜め、待遇改善、教師の安全と社会的地位回復などに言及する急進右派に期待する教師が増えていると指摘した。
投票日を控え、国内ではさまざまな政治運動が熱を帯びている。3日、オードセーヌ県で第2回投票のポスターの張り換えを行っている運動員が襲撃されるなど、暴力がエスカレートしており、RNの候補者が襲われる事件も起きている。
一方、候補一本化で撤退を決めた候補者に対してもSNS上の憎悪に満ちた脅迫メッセージが大量に拡散した。RN阻止のための左派と中道のなりふり構わない共闘では、その後の政治運営はうまくいかないという指摘もある。
フランスは今、過去にない政治意識の変化を経験しており、いったん中道を選んだ有権者の戸惑いは大きな混乱を招いている。同時に第1回投票で60%を超える高い投票率が、第2回投票で下がる可能性も指摘され、RNを利する可能性もある。