第2回投票控え姿見せず
【パリ安倍雅信】フランスのマクロン大統領が、予定されていた国際行事以外で公の場に最後に姿を見せたのは、国民議会(下院)選第1回投票の6月30日。黒い革ジャンに映画「トップガン」の俳優トム・クルーズのようなサングラス、黒い野球帽といういでたちで妻ブリジット夫人と投票に現れた時だった。これまで見たことのないいでたちに、敗軍の将は姿を見られたくなかったとか、「とてもクールだ」とか、さまざまな声がSNS上を飛び交った。
側近の一人は、投票前の選挙戦で、中道与党連合の候補者の多くが、ポスターにマクロン氏の写真を刷り込むのを拒否したことで、想像以上に嫌われていることを知り、姿を現さなくなったと指摘。第2回投票を7日に控え、姿を見せないのは選挙に逆効果だからという見方も広がっている。
脱マクロン」が広がっているのは確かだ。金融界のエリートは2017年、39歳の若さで一度も国政選挙を戦うことなく、議員経験なしで大統領になった。反移民政策で「極右」「悪魔」のレッテルを貼られた右派・国民連合(RN)は、ジャンマリ・ルペン氏の下で「脱悪魔化」を目指していた。そのルペン氏との一騎打ちで大統領に選ばれた。異例ずくめのマクロン氏はナポレオンの再来といわれ、22年の大統領選を勝ち抜いて今は2期目を務める。自ら決断した解散総選挙が裏目に出たことによる挫折感を指摘する声も少なくない。
ただ、マクロン氏は民間金融界ではよくある独断型指導者で、大統領就任当初の閣議で「分かった。あとは自分で考える」と大統領執務室にこもり、「決めるのは私だ」が口癖だった。今回も解散がアタル首相に伝えられたのは発表の1時間前で、アタル氏が「自分が辞任するから、解散はしないでほしい」と訴えたが、聞き入れられなかったと伝えられる。