【パリ安倍雅信】フランスで6月30日と7月7日に行われる総選挙(下院、定数577)は17日、各党の選挙運動が正式にスタートし、舌戦の火蓋(ひぶた)が切られた。欧州連合(EU)の欧州議会選で圧勝し、動向が注目される右派・国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン氏は、「RNが選挙に勝利し、与党となった場合でもマクロン仏大統領の辞任は求めない」と述べた。仏日刊紙のフィガロ日曜版が報じた。ルペン氏は「制度を重んじ、混乱は望んでいない」と述べた。
一方、マクロン陣営は、現在、議会の第2勢力であるメランション氏率いる急進左派の不服従のフランス党を含む左派勢力(NUPES)が共闘を確認したため、現与党ルネサンス党は劣勢に回っている。
欧州議会選でもRNはルネサンス党の倍の得票率だった。今回の下院選は前回2022年の大統領選で敗者となったルペン氏が、2027年の次期大統領選での勝敗を占う選挙ともいわれている。
8日には欧州議会選を前に仏全土で、内務省発表で約25万人、パリ市で7万5000人が、RNに抗議する集会に参加したとされるが、中心は労働組合、左派学生団体、人権団体だ。彼らは反移民、EU懐疑派のRNの台頭に抗議する勢力で、2018年から始まったマクロン政権批判の黄色いベスト運動とも重なっている。抗議デモには2万1000人の治安部隊が動員された。
マクロン氏は、欧州議会選でユーロおよび北大西洋条約機構(NATO)懐疑派のRNがルネサンス党や左派党を圧倒したことを受け、国民議会を解散し総選挙に踏み切ることを決めた。
決定から1週間は、左派各勢力は懸命の話し合いで、左派勢力の結束を確認した一方、RNも他の右派勢力に協力を求めており、中道右派の共和党は党首が積極的な一方、党員幹部は党首の除名に動くなど混乱している。
仮に下院選挙の結果、RNが第1党になった場合はRNのジョルダン・バンデラ党首(28)が首相に指名され、閣僚人事に影響を及ぼし、マクロン大統領の政権運営も困難になることが予想される。そうなれば7月26日に始まるパリ五輪・パラリンピック大会期間中も政治的抗議デモが起きる可能性もある。