
ロシアのプーチン大統領は7日、サンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラムで、欧米による経済制裁の影響は限定的とした上で、参加したアジア、アフリカなどの国々と経済連携を強化する考えを示した。一方、米国が、供与した兵器でウクライナがロシア領を攻撃することを容認したことに対抗し、欧米の敵対者に同様の兵器を供与することを示唆した。(繁田善成)
ロシアに投資を呼び込む目的で、1997年からサンクトペテルブルクで開催されている「国際経済フォーラム」。かつては世界経済フォーラムとパートナーシップを結び、欧米の首脳らも参加していたが、2014年のクリミア併合以降、その様相は大きく変わった。
今回の日程は5日から8日。参加した外国首脳は、ボリビアとジンバブエからのみ。ロシア以外では、中国などアジア、アフリカ、中東からの参加者が多くを占めた。ロシアで活動を禁止されているアフガニスタンのタリバンの代表も招かれた。
今回のフォーラムのテーマは「多極世界の基礎-新たな成長点の形成」。米国一極集中に対抗し、ロシアを中心に中国やインド、アフリカなどの国々と連携し「多極世界」を作り経済成長を図る、というものだ。
端的に言えば、クリミア併合やウクライナ侵攻により欧米先進国から縁を切られ、国際政治の辺境に追いやられたロシアが、その戦略的失敗を「多極世界を作るための戦い」にすり替え、自己正当化と、国民へのアピールを図ろうとしているのだろう。
プーチン大統領は7日の演説で「あらゆる障害や不当な制裁にもかかわらず、ロシアは依然として世界貿易の主要なプレーヤーの一つであり、物流や地域協力を積極的に発展させている」として、欧米による経済制裁の影響は限定的だと強調した。
さらに「世界4大経済大国の一つとなる目標を設定したが、世界銀行が先週発表した推計値を含むデータによると、ロシアはすでに世界第4位の経済大国となった」と自賛した。世銀の購買力平価GDP(国内総生産)ランキングを示していると思われる。
プーチン大統領は06年、このサンクトペテルブルクで開かれたG8サミット(主要8カ国首脳会議)で議長を務め、世界のリーダーの1人としての存在感を示した。そのプーチン大統領が、ボリビアとジンバブエの大統領の間に座り「世界第4位の経済大国」をアピールする姿は、一種の哀れささえ感じさせる。
また「不当な経済制裁下での経済成長」は、軍需産業に対する、国家予算の3分の1にも膨れ上がった巨額な財政出動がもたらした一時的なものだ。軍需産業以外の経済は縮小し、兵器以外の新たなものは生み出されていない。
一方、プーチン大統領は6日、外国記者らとの会見で、バイデン米大統領がウクライナに対し、供与した長距離攻撃兵器でロシア領内を攻撃することを一部認める決断を容認したことを強く批判した。
「高精度長距離兵器について二つに分類する必要がある。一つは(米供与の多連装ロケットシステム)МLRSであり、ウクライナ軍はこれを自力で運用できる。しかし、(英供与の長距離巡行ミサイル)ストームシャドーと、(米供与の地対地ミサイル)ATACMSを、ウクライナ軍が独自に使用することはできない。どの目標を攻撃するか、その飛行計画は事実上、兵器を供与した側が決定する」
そう語ったプーチン大統領は、「これがロシアに対する戦争への直接の参加であると判断した場合、われわれは同様の行動を取る権利を留保する」と明言した。
誰に高精度兵器を供与するかについて、プーチン大統領は語らなかった。しかし、ロシア安保会議のメドベージェフ副議長は「米国を敵と考える者は、誰でもこのカテゴリーに分類される可能性がある」として、米国と敵対するテロリストに兵器を渡す可能性も示唆した。