【パリ安倍雅信】フランスでは1905年12月9日に政教分離(通称、ライシテ)あるいは世俗主義を法制化し、記念日としている。イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続く中、世論調査会社の「Ifop」が行った「フランスの世俗主義の実施はイスラム教徒を差別しているか」との世論調査結果が8日に公表され、在仏イスラム教徒の78%が差別を感じると回答した。
フランスではイスラム女性が着用する全身を覆うブルカやニカブなど、信仰を表す服装を公共の場で着用することはライシテの原則から禁じられている。最近では、イスラム諸国の伝統的民族衣装アバヤを学校に着てくる生徒が議論になったばかりだ。
在仏イスラム教徒の4分の3は、ライシテが可決される以前にフランスで適用されていた政府と宗教間の協定体制への復帰を望んでおり、そのうち75%が「主要宗教の礼拝所や宗教指導者への公的資金提供に賛成」としている。さらに2004年に定められたイスラム女性のスカーフ着用禁止法の廃止も75%が求めている。
一方、フランスで増加しているユダヤ人住居への落書きやユダヤ人への暴力など、反ユダヤ主義行為について、政府が厳しく批判し、次々に逮捕者を出していることは、在仏イスラム教徒の立場を複雑にしている。
ライシテは戦後のフランスの左傾化で無神論者による宗教廃絶にも繋がった。信仰の自由と公平さを担保するはずのライシテが、イスラム教徒には差別としか映らない現実はフランス社会に深い影を落としている。