
欧州連合(EU)に先駆けて中国の広域経済圏構想「一帯一路」に参加を表明したイタリアは、年内に離脱の有無を決定する検討に入った。EUで中国と最も経済関係を築いてきたドイツのショルツ首相も先月、対中外交の見直しを表明。今年3月にはEUの欧州委員会が「中国リスク」を鮮明にした。中国離れが進む欧州の動きを探る。(パリ・安倍雅信)
イタリアは2019年3月、他のEU加盟国の懸念をよそに、中国の「一帯一路」への参加の覚書に署名した。背景には2009年のギリシャの政権交代で露呈した財政危機によるユーロ危機でEUが課した緊縮財政にイタリアが反発したことがあった。
イタリアはスペインと共にギリシャに次ぎ、EU経済の足を引っ張る国と見なされ、特にEU最大の資金拠出国のドイツのメルケル首相(当時)が、債務危機にある国に対して厳しい緊縮財政を迫り、結果的にイタリアではEU懐疑派のポピュリズム政党が台頭し、EUの警告を無視して財政難解消の切り札として中国接近に動いた。
当時の一帯一路参加の目玉は、イタリア最大規模を誇る北西部ジェノバ港から約500㍍の沖合での防波堤拡張の海底工事にあった。巨大コンテナ船による大量輸送に欠かせない13億ユーロ(約2015億円)規模の工事だったが、今年5月に着工した事業を請け負ったのは伊企業4社で中国は参加しなかった。
イタリアが一帯一路に加盟して以来、中国への輸出は145億ユーロから185億ユーロに増加したものの、中国のイタリアへの輸出は335億ユーロから509億ユーロへとはるかに増加し、中国が利益を得ただけだった。
さらに他のEU加盟国に対する中国の投資は、イタリアへの投資をはるかに上回り、中国のイタリアへの直接投資額はむしろ微減で、一帯一路加盟の利点は引き出されていない。結果、発電所や鉄道、高速道路、港から電気通信インフラ、光ファイバーケーブルに至るまで最先端のスマートシティー建設への中国からの投資は期待外れに終わった。
イタリアは中国との覚書の5年ごとの更新が2024年3月に迫っている。一帯一路構想の約束が果たされていないことや中国に対する外交戦略的再評価により、イタリアは離脱する構えを見せている。
この4年間にイタリアを取り巻く環境は大きく変わった。新型コロナウイルスの感染拡大で最も最初にダメージを受けたのはイタリアだった。加盟各国が財政危機に苦しむ中、EUは近年、批判されている厳しい財政運営ルールを見直す方向に舵(かじ)を切っている。
一方のドイツ政府は今年7月、対中国戦略に警告を発する文書を公表し、「我々は中国に対するアプローチを変え」、ドイツはEUとの連携を深め、「調整する必要がある」と表明した。また昨年5月、独連邦経済・気候保護省は、最も古くから対中投資を行ってきた独自動車メーカーなどに対して「新疆ウイグル自治区に事業所を持つドイツ企業に対し、中国での投資プロジェクト4件の投資保証を延長しないことを決めた」と発表した。
EUは3月に対中政策の「中国リスク」を念頭に全面的見直しを表明している。ドイツの対中政策への提言は、EUの中国リスク回避の方針と一致するものだ。
欧州最大の中国の貿易相手国であり、対中経済関係の豊富なドイツの対中政策はEU全体に大きく影響するものとみられる。ただ、ドイツが中国との公正さを欠く関係を将来的に調整できるか疑問視する声もある。それほど中国との経済関係は深いからだ。
一方で欧州全体が中国との関係見直しに舵を切ったかというとそうではない。4月にはマクロン仏大統領が中国を訪問し、両国間の関係強化の考えを示した。その後も中国寄りの発言などが続いている。
もちろん連邦制ではないEUの外交政策は一枚岩ではない。ロシアによるウクライナ侵攻後もロシアへのエネルギー依存を止めていない国もある。しかし、経済的な目的で中国に助け舟を求めるフランスのような動きは主流とはなっていないのが現状だ。







