トップ国際欧州北欧各地でコーラン燃やされる イスラム教国での報復懸念 ロシア側の妨害工作指摘も  

北欧各地でコーラン燃やされる イスラム教国での報復懸念 ロシア側の妨害工作指摘も  

7月20日、ストックホルムのイラク大使 館前で、イスラム教の聖典コーランを手 にするイラク難民サルワン・モミカ氏 (EPA時事)

北欧のスウェーデンやデンマークでイスラム教の聖典コーランが燃やされるという出来事が多発し、世界のイスラム教国で激しい抗議デモが行われている。一方、世界最大のキリスト教派、ローマ・カトリック教会の総本山、バチカン教皇庁は、「中東などイスラム教国でコーラン焚書(ふんしょ)に抗議し、聖書を燃やすといった報復行為が多発するのではないか」と懸念している。コーラン焚書は北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指す北欧諸国へのロシア側の妨害工作ではないかという声も聞かれる。(ウィーン・小川 敏)

バチカン・ニュースは1日、「コーランの焼却がキリスト教徒を危険にさらす」と報じ、北欧のスウェーデンやデンマークでコーランが燃やされていることに強い危機感を示した。

国際カトリック宣教団(ミッシオ)のグレゴール・フォン・フュルステンベルク副会長は1日、「スウェーデンでのコーラン焼却や冒涜(ぼうとく)行為は中東のキリスト教徒を危険にさらしている。共犯と見なされ、政治的扇動者から西洋の第五列(スパイ)として非難され攻撃対象となる」と述べた。

スウェーデンでは「言論の自由」が重視され、治安部隊もコーラン焚書の抗議デモを公認しているが、同副会長は「コーランの演出された焚書は何らの議論の空間も生み出さない。むしろ全ての対話を断絶し、宗教的な動機による憎悪と暴力の問題に対する真の建設的な対決を困難にする」と強調した上で、「全ての宗教間の理解を促進する立場の人々は結束して宗教の聖典焚書に断固抗議すべきだ」と述べている。

スウェーデンで6月末、イラク人のサルワン・モミカ氏がストックホルムのモスク(イスラム教礼拝所)近くでコーランを焼却した。7月中旬にはイラク大使館前でコーランを踏みつけ、イラクの旗や、シーア派の指導者ムクタダ・サドル師、イランの最高指導者ハメネイ師の写真を踏みにじっている。モミカ氏はフランスの新聞に対し、「法律によって許される限り、コーランを焼き続ける」と説明している。実際、7月31日にもスウェーデン国会前でコーランに火を付ける騒ぎを起こしている。

スウェーデンのコーラン焚書事件が報じられると、イラクで22日、数千人が抗議活動を行った。バグダッドでは群衆がスウェーデン大使館を襲撃し、放火した。一方、デンマークでは25日、右翼ポピュリストグループがコペンハーゲンのエジプト大使館前でコーランを燃やした。デンマークでは過去1週間でこのような事件が3件起きた。ドイツでも同様の事件が発生している。例えば、シュバーベン地方のマウルブロンのモスク前でコーランが焼かれた。

興味深いのは、スウェーデンがフィンランドと共に北大西洋条約機構(NATO)に加盟を申請した時期とコーラン焚書事件が重なっていることだ。スウェーデンのボーリン民間防衛相は26日、「恣意(しい)的な反スウェーデン・キャンペーンの背後で、ロシアを含む国家や半国家の組織が暗躍している」と、ロシアを名指しで批判した。

ドイツの詩人ハインリヒ・ハイネ(1797年~1856年)は「本を焼くところでは、やがて人を焼く」と述べた。ナチス・ヒトラー政権が出現する前の言葉だ。残念ながら、ハイネの「予言」は当たった。聖典を含む書籍は人間の精神的営みの成果だ。その書籍を燃やす行為は人間を燃やすことにもつながるというわけだ。

フランシスコ教皇はアラブ首長国連邦(UAE)の新聞とのインタビューで、「コーランを燃やす行為に憤りと嫌悪を感じる。神聖とされるあらゆる書物は、信者への敬意から尊重されるべきだ」と説明、「言論の自由は決して他者を軽蔑するための口実として利用すべきではない」と語っている。

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