国防・外交を積極化
ウクライナのゼレンスキー大統領はロシア軍の侵攻以来、「この戦いは単なるウクライナとロシア両国間の戦闘ではない。民主主義の欧州と独裁国ロシアとの戦いだ」と繰り返し主張してきた。一方、「欧州の盟主」ドイツのショルツ政権はウクライナ武器供与を一時期躊躇(ちゅうちょ)していたが、「ツァイテンベンデ(時代の転換期)」をキーワードに掲げ、積極的にウクライナ支援にも乗り出してきた。
第2次世界大戦の敗戦国であり、ナチス・ドイツの戦争犯罪という負の歴史を背負うドイツは戦後、経済復興に全力を投入し、欧州の経済大国に発展したが、国防・外交分野では消極的なスタンスを取ってきた。その点、日本とよく似ている。
そのドイツにとってウクライナ戦争は国防・外交面で戦後の政治の枠組みを破る絶好の機会となった。「時代の転換期」というキーワードを掲げたショルツ政権は、軍事費を国内総生産(GDP)比で2%以上に大幅に引き上げることを決定。戦争下のウクライナへの武器支援問題でも地対空誘導弾パトリオット(PAC3)とIRIS-T防空システムに加えて、これまでに18両のレオパルト2A6主力戦車、40両のマルダー歩兵戦闘車、34両のゲパルト対空戦車をウクライナに納入してきた。ウクライナ戦争前では考えられない変化だ。