
【パリ安倍雅信】フランスのマクロン大統領が、北大西洋条約機構(NATO)の東京事務所開設プロジェクトに反対していることが報じられたのは、6日付の英フィナンシャル・タイムズだった。マクロン氏がNATOの東京事務所開設は「大きな過ちを犯すことになる」と述べたことがその内容だった。
背景には4月、中国を訪問したマクロン氏が習近平中国国家主席に急接近し、経済関係の構築に動いたことがある。マクロン氏は習氏から「核兵器は使われてはならない」との認識を引き出し、ウクライナ紛争の仲介役としての中国を持ち上げた。少数民族のウイグル族弾圧問題など見過ごせない課題については「非難よりも敬意を表す」道を選んだとマクロン氏は説明し、関係強化優先の意向を示した。
実はマクロン氏は4月に強引な方法で年金改革を成立させ、その後も反対運動が継続し、7日にも全国規模の抗議運動が起きたばかり。支持率は低迷したままで、フランスの複数メディアは、2018年に始まった黄色いベスト運動の時と同様、政権は危機的状況にあると指摘されている。当時と違うのは、当時は議会で圧倒的過半数をマクロン派の政党が維持していたが、今は単独では過半数を得ていないため、さらに政治運営は難しくなっている。
支持率回復の鍵は経済で、黄色いベスト運動の時はガソリン税を引き上げようとして失敗したため、今は国民を安心させる原発増設などエネルギー政策を矢継ぎ早に打ち出し、環境保護政策で苦しむ農家に対しては「厳しい環境規制は休止すべきだ」との認識をマクロン氏は示している。同氏にとっては中国との経済関係回復は国内経済浮揚の優先課題で、中国を怒らせれば政権が傾く可能性がある。
フランスから遠く離れた東アジアで何が起きようとフランスへの影響は少ないと踏むマクロン政権は、今、わざわざ、NATO東京事務所を開設し、中国を怒らせ、米中対立に巻き込まれたくないという裏の心理も働いている可能性は高い。







