
パリに本部を置く国連教育科学文化機関(ユネスコ)で開催されたプラスチック汚染対策の国際条約会議は3日、5日間の交渉を経て年内に初の条約草案を作成することで合意して閉幕した。2025年までに法的拘束力のある汚染防止条約を発効する目標に向けて動き出した。(パリ・安倍雅信)
175カ国による会議の閉幕を受け、政府間交渉委員会(INC)のフィリップ事務局長は、「誰もが自分たちの領土や海洋、その他の場所でのプラスチック汚染を望んでいない」とし、「歴史的」な草案作成の道筋ができたことを評価した。
フランスのマクロン大統領は会議の冒頭、プラスチック汚染を「時限爆弾」と称し、「失う時間はない」として早期合意を呼び掛けた。マクロン氏はプラスチック汚染が「生態系、健康、気候を脅かしている」とも述べた。
仏日刊紙ルモンドなど複数の地元メディアが、5日間の交渉を「緊張と抵抗の連続だった」と指摘した通り、最初の2日間は手続き上の問題で協議は行き詰まった。特に合意に達しなかった場合に、条約を3分の2の賛成で承認する意思決定が問題視された。産油国のサウジアラビアが協議の先延ばしを主導し、湾岸諸国やロシア、イラン、中国、インド、ブラジルが加わったが、成功しなかった。ただ、産油国だけでなく、石油化学産業の発展を妨げる可能性のある過度の制限措置や規制には、米国でさえ消極的だった。
さらに予想されたことだったが、地球温暖化対策と同じように、プラスチック汚染の被害者である途上国は、先進国に資金提供を求めている。その新たな基金創設を支持する勢力に対し、フランスを含む欧州連合(EU)は地球環境基金の活用を主張した。
環境保護活動家や非政府組織(NGO)は、サウジアラビアやロシアなどによる先延ばし戦術や化学メーカー、プラスチック業界による妨害的介入を批判。一方で、世界自然保護基金(WWF)は「目に見える進歩」があったと評価した。
この1世紀、化石燃料由来のプラスチックは、産業化社会に多大な影響を与えた。特に大量生産が始まった1950年以降、石油化学工業は先進国の基幹産業となり、今に至っている。その一方で、地球にダメージを与える大規模な汚染も引き起こした。
特に深刻なのは、プラスチックの回収・リサイクル率が低い多くの途上国で、プラスチックごみが溢(あふ)れ、海岸や河川で環境問題を引き起こしていることだ。毎年、大量のプラスチックが海に流出し、海洋生物の命を奪うなどの深刻な汚染が広がっている。
特に近年、問題となっているのは、海洋を移動中に摩擦などで粒子化したマイクロプラスチックが、自然に生息する動植物や胎児の胎盤からも検出され、生命全体に深刻な危機をもたらしていることだ。経済協力開発機構(OECD)は、プラスチックの年間生産量は20年間で2倍以上の4億6000万㌧に増加し、2060年までにほぼ3倍に達すると予想している。
今回の会議で、ノルウェーとルワンダが率いる最も野心的な目標を掲げる連合には、当初、フランスをはじめ53カ国が参加していたが、プラスチック主要消費国の日本を含む5カ国が会議中に新たに加わった。
2024年開催のパリ五輪では、使い捨てプラスチックが禁止された。再利用可能なカップやその他のアイテムが推奨されている。ドイツでは、ペットボトルの回収・再生処理を同時に行う機械をスーパーなどに設置している。
プラスチック条約草案に何が盛り込まれるかは依然、不明だが、今年11月にケニア・ナイロビで開催される次回の代表会合に向け、継続的協議が行われることが願われている。







