【パリ安倍雅信】フランスのマクロン大統領は昨年4月24日、右派・国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン候補に決選投票で勝利し、再選されて1年が経(た)った。2017年に同じルペン氏に決選投票で勝利した後の1年に比べ、状況はあまりにも厳しい。理由の一つは自身が立ち上げた中道・共和国前進(現ルネッサンス)が昨年の国民議会(下院)選挙で過半数割れしてしまったことにある。
2年目を終えた今月、印象に残ったのは今月15日に強引な手法で成立させた年金制度改革。野党・左派連合だけでなく、野党・中道右派の共和党も反対に回り、反対の大号令の中で議会審議を途中で省略し、憲法49条3項を適用、メディアからは「民主主義の原則を踏み外した」と批判された。
第1次マクロン政権でも労働法の改正や国鉄改革で議会審理を省略したが、下院では与党・共和国前進が圧倒的過半数を占めていた。雲行きが怪しくなったのは反政府運動の黄色いベスト運動が起き、長期化したことだ。
頼みの共和党は連立を拒否し、結果的に年金改革法案を議会で通すこともできない状況に追い込まれた。マクロン氏は今月17日のテレビ演説で今後、100日以内に国民生活を充実させる新たな政策を打ち出すことを約束し、年金改革問題に終止符を打とうとした。