
【ウィーン小川敏】ドイツ政府は25日、独製主力戦車「レオパルト2」をウクライナに供与することを決めた。ポーランドなどが保有しているレオパルト2のウクライナへの供与も承認した。ウクライナ政府はドイツに供与を強く要請してきた。ロシアの反発は必至だ。ロシアは軍を再編成中で、今春には大攻勢を開始するのではないかとみられ、戦闘の激化は避けられない。
ショルツ独首相は同日、連邦議会でレオパルト供与について「ウクライナ支援のために国際的なパートナーと緊密に行動する。財政的、人道的支援だけでなく、武器の提供も行う」と強調した。
ドイツはまず14台の「レオパルト2」を供与する予定。ショルツ氏は主力戦車の供与について、「ドイツ単独では実施しない」と主張し、米国など同盟国との密接な連携を条件としてきた。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは24日、バイデン米政権が同国製の主力戦車「エイブラムス」のウクライナ供与を週内に発表すると報じた。ショルツ政権は水面下で米政府と協議を重ね、米国と共に供与を決定した。
ドイツがウクライナに供与するのは、独連邦軍が保有している最新型の「2A6」。レオパルト2は欧州では14カ国で2000台以上が使用されている。ポーランドをはじめフィンランド、スペイン、ポルトガルなどがレオパルト1、2を供与すると表明していることから、最終的には300台以上のレオパルトがウクライナ軍の手に渡ることになる。
レオパルトの製造先、独軍需企業ラインメタルによると、現在提供できるレオパルト2は139台。ウクライナのゼレンスキー大統領はドイツなど欧米諸国に戦車300台の供与を強く求めてきた。
レオパルト2が実際に戦闘で使用されるのは、ウクライナ兵士の訓練期間後であり、数カ月後になるとみられる。軍事専門家によると、ウクライナ軍にとって米国製エイブラムスよりも欧州の軍隊で使用されているレオパルト2の方が適しているという。
独政府はウクライナへの軍事支援で、①可能な限りウクライナを支援する②北大西洋条約機構(NATO)とドイツが戦争の当事国となることを阻止する③ドイツ単独で決定しない――の3原則を掲げてきた。ドイツ南西部のラムシュタイン米空軍基地で20日に開催されたウクライナ支援会議では、最大の課題であったレオパルト2供与でドイツが歩み寄りを見せなかったことから、欧米諸国から批判の声が高まっていた。同時に、独連立政権内でも「緑の党」や自由民主党(FDP)からショルツ首相(社会民主党=SPD)への批判が飛び出していた。





