
【パリ安倍雅信】イタリアのメローニ首相は29日、新型コロナウイルスの感染の急拡大を受け、中国からの渡航者に対して抗原検査を求めているイタリアの措置を欧州連合(EU)全体に拡大し、域外からの中国人渡航者に抗原検査陰性証明の提示を義務付ける措置を取るよう期待すると表明した。一方、EUとしては中国人観光客による経済効果を期待するオーストリアなどが反対しており、賛同は得られていない。
イタリアは2020年に新型コロナウイルスが拡大した際、国境を越えて感染が拡大した経験もあり、EU全体が統一した措置を取らなければ、感染拡大を防げないという危機感がある。人と物の移動を保証するシェンゲン協定により、EU域内の大半の国が域内移動に関する国境検問を行っていない。それが弱点となって感染者の移動で感染が拡大した過去がある。
ただ、当時もEUは域外からの渡航者に対して統一した措置を取らなかった。今回もEU保健相会合は29日、共通の方針で合意することができずに終了した。フランスやポルトガル、中国からの観光収入を期待するオーストリアは統一した新たな渡航制限に反対している。仏健康リスク監視予測委員会(COVARS)のオートラン委員長も「科学的見地からは現段階では国境での管理復活は必要ない」との認識を示している。
さらに専門家の中にはEU市民には十分な免疫ができており、水際対策を強化する必要はないとの意見もある。ただ、欧州委員会は引き続き、協議を続けるとしている。EUはコロナ対策と経済活動のバランスを考慮しながら検討しており、フランス政府は公共交通機関を利用する際などに再びマスク着用を奨励しているが義務化はしていない。