トップ国際欧州「露軍の腐敗がプーチンを悩ます」仏で証言本出版の露軍脱走兵

「露軍の腐敗がプーチンを悩ます」仏で証言本出版の露軍脱走兵

5月9日、モスクワで軍事パレード終了後、「無名戦士の墓」の献花式に臨むロシアのプーチン大統領(AFP時事)

【パリ安倍雅信】「われわれが兄弟国ウクライナを敵にする理由が、まったく理解できなかった」と語ったのは、今夏、露軍を離脱しフランスに亡命申請した第56空挺突撃連隊の空挺部隊軍曹、パベル・フィラティエフ氏(34)。彼はSNSで141ページにわたる自身の衝撃的な戦争体験を証言し、16日に戦争の終結を訴えるため『ZOV56』と題した本を14カ国で出版した。

ウクライナのヘルソン戦に参加した露軍の忠実な兵士だった同氏は、戦場で負傷し、ロシアに送り返された後、プーチンの戦争に強い疑念を抱き、同戦争を終わらせるための証言者になることを決意。人権団体の助けでロシアを脱出し、フランスに向かった。ウクライナ紛争に加わった当初から「何が起きているのか理解できなかった」と述べ、軍人として「軍隊がどのように準備されているか、または準備されていないかをよく知っていた」として、露軍に犠牲者が多数出たことも当然とした。

「私の意見では、私たちの軍隊は主に三つの理由で、もはやプロではなかった。まず、腐敗が組織を悩ませていた。二つ目は指揮官が部下から離れていた。さらに軍事装備と訓練は時代遅れだった。加えて、この紛争で兵士は明確な目標が与えられず、闘う動機付けがなかった」と書いている。

さらに「何よりも、この紛争は実際の軍隊によってではなく、民兵や民間の軍事会社によって主導されている」という事実を指摘した。そして「露軍の至る所に汚職が蔓延(まんえん)していた」と述べ、自身の経験談として、出される食事の冷たいソーセージは半人分で、食料を提供する民間グループに盗まれており、制服、軍事車両など「あらゆる分野で不正が横行していた」と証言している。

フィラティエフ氏は最近、露軍がヘルソンからの撤退を決めたことについて「唯一の優れた戦略的決定」と仏週刊誌レクスプレスのインタビューで述べた。同インタビューで「他の皆と同じように、私はウクライナにおけるロシアの戦略を理解していない。知っているのはプーチンだけかもしれない」と述べた。

さらに、そもそも同紛争のロシアの目標は明確でなく、「ロシア軍の状態を考えると、プーチン大統領が核兵器を使用しない限り、ルガンスクとドネツクの地域を含むロシア軍が占領している地域をウクライナが解放する可能性がある。一方、私はクリミアについてより懐疑的だ。理由は半島の地理的な位置から、ウクライナ軍が簡単に奪還することはできないからだ」と述べた。

ロシアの核兵器使用の可能性については、プーチンが2月24日にウクライナ侵攻を決断した時、誰も止める者がいなかったことを挙げ、「核兵器についてもプーチンが使用した場合、彼を止めることができるかといえば、おそらくできない。すべてが起こる可能性があるが、わが軍の装備の一般的な状態を考えると、ミサイルも完全に錆(さ)びている可能性がある」と指摘した。

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