【パリ安倍雅信】ブリュッセルで開催された欧州連合(EU)臨時首脳会議は30日、対露追加経済制裁の一つとしてロシア産石油の輸入禁止で合意した。同時にロシア産への依存度の高いハンガリーが強く反対したため、当面は陸上パイプライン経由の分を禁輸対象から除外し、海上輸送分のみとする妥協策となった。ロシア産石油最大の輸入地域である欧州は、年内に約9割の輸入削減を目指す。
EU首脳らが、域内のエネルギー確保が困難になり物価高騰に繋(つな)がるロシア産石油の禁輸に踏み切ったのは、ロシアに石油輸入によって流れる資金が、結果的にウクライナへ軍事侵攻するロシア軍の主要な資金源になっているとの批判が高まっていたからだ。今回禁止される海上輸送によるロシア産石油の輸入量は、当初の禁輸対象の輸入量の約3分の2に当たる。
最後まで抵抗したハンガリーを除けば、ドイツとポーランドが年内にパイプライン経由分の輸入を停止すると約束したため、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は「年末までに約90%の輸入を止めることになる」と説明した。今回の合意は、ブリュッセルでの首脳会議で承認された制裁の6番目のパッケージの一部で、27全加盟国が合意する必要があった。
ロシアは現在、EUの輸入石油の27%と天然ガスの40%を供給しており、EUはロシアに年間約4000億ユーロ(54兆9000億円)を支払っている。禁輸が実現すればロシアには大きな経済的痛手となる。
一方、今回のEU首脳会議でハンガリー、チェコ、スロバキアなどロシア産石油に依存する内陸部の加盟国が一枚岩でないことに対して、今後、ロシアが揺さぶりを掛けてくる可能性が指摘されている。