【パリ安倍雅信】北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は18日、北欧のフィンランドとスウェーデンからのNATO加盟申請書を同時受理した。ブリュッセルのNATO本部に駐在する両国大使が同事務総長に手渡した。両国は長期にわたり保ってきた軍事的中立をロシアによるウクライナ侵攻を受け、歴史的転換に踏み切った。
申請書を受理したストルテンベルグ氏は、「申請は歴史的な一歩だ。両国が加盟すれば、われわれの安全保障を高めることになる。私は温かく歓迎する」と述べ、迅速な検討を約束した。ただ、NATO加盟国のトルコが、北欧2国がクルド分離勢力のテロ組織を擁護しているとして加盟に難色を示している。NATO加盟国の全会一致が新規加盟決定の原則であるため、トルコとの調整が急務とされる。
NATOとしては2国の加盟決定を急ぎたい考えだが、トルコが出す条件をクリアする必要がある。欧州連合(EU)は6月末に、ウクライナ危機を受け新たな欧州の安全保障戦略を話し合う首脳会議を予定している。
フィンランドは15日に加盟申請の政府方針を決め、翌16日にはスウェーデンも続いた。両国とも昨年の世論調査ではNATO加盟への支持が5割を大きく下回っていたが、ロシアのウクライナ侵攻で5割以上の国民が加盟支持を表明し、軍事的中立の立場の保持はメリットより、リスクが高いと見る世論に変わっている。
NATO加盟で北欧の安全保障強化を目指すフィンランドとスウェーデンは今後、ロシアの脅威にさらされることも覚悟の上で中立から大きく舵(かじ)を切った。ただ、NATOについても、マクロン仏大統領などが大幅な改革を主張すると共に欧州独自の安全保障体制の構築を目指しており、ウクライナ危機で急速に議論が進みそうだ。