トップ国際欧州・ロシアロシア「健在」アピール失敗 かさむ戦費、経済を圧迫

ロシア「健在」アピール失敗 かさむ戦費、経済を圧迫

 「ロシア版ダボス会議」と呼ばれるサンクトペテルブルク国際経済フォーラムが開幕した3日、ウクライナの長距離ドローンが同市の石油ターミナルや、近郊の海軍基地などを攻撃した。「ロシアの経済的安定」をアピールするもくろみはつぶされ、ウクライナから1100㌔離れたプーチン大統領の故郷に黒煙が立ち上る姿を、内外にさらすことになった。(繁田善成)

行進するロシア兵=4月29日、北西部サンクトペテルブルク(EPA時事)
行進するロシア兵=4月29日、北西部サンクトペテルブルク(EPA時事)

 ロシアに投資を呼び込む目的で、1997年からサンクトペテルブルクで開催されている国際経済フォーラム。かつては世界経済フォーラム(WEF)とパートナーシップを結び、欧米の首脳らも参加していたが、2014年のクリミア併合以降、クレムリンのプロパガンダのショーケースと化した。

 それでも、今回のフォーラムにはウズベキスタンのミルジヨエフ大統領やタンザニアのサミア大統領、サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相のほか、米独の代表らを招待し、「ロシア経済は健在であり、世界から孤立していない」ことを示す目算だった。

 クレムリン内部情報を入手していると主張するSNSチャンネル「対外情報庁(SVR)将軍」などの一部情報源は、以下のように発信した。

 「サンクトペテルブルク国際経済フォーラムの安全確保は、米露の水面下の交渉で合意された。米側は、フォーラムのあらゆるイベントおよび関連インフラへの攻撃を容認しないことで、ウクライナ側と合意に達したと語った」

 この主張には根拠があるように思われる。

 フォーラムの開幕を控えた3日午前5時(日本時間同日午前11時)ごろ、ウクライナのドローンがサンクトペテルブルク港の石油ターミナル、続いて、同市近郊のクロンシュタット海軍基地を攻撃した。フォーラムの招待客や参加者は、立ち上る黒煙を目の当たりにしながら会場入りすることになった。

 翌4日、ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアのプーチン大統領に公開書簡を送った。「この戦争はあなた個人の選択によるものだ。ウクライナはその終結を提案する」として、プーチン氏との直接会談を呼び掛けた。

 その後、ウクライナ軍はロシアの反応を見守った。

 プーチン氏は5日のメインセッションに登壇し、ゼレンスキー氏による直接会談の提案を一蹴した。

 「現時点でゼレンスキー氏と会う意味が分からない」「国家全体が前線のロシア軍兵士らを誇りに思っている。頑張れ、兄弟たちよ」

 その発言を受け、ウクライナ軍は6日朝、サンクトペテルブルク郊外の軍事施設などに再びドローン攻撃を行った。

 フォーラムの閉幕イベントに参加していた人々は、鳴り響く空襲警報の中で、サンクトペテルブルク市当局による屋内待機勧告を受けた。帰国しようとしていた参加者は、プルコボ国際空港の飛行制限が解除されるまで数時間待たされた。

 ウクライナ侵攻開始から5年目にして、ロシアは国威発揚の最重要イベントである5月9日の対独戦勝記念パレードや、国際経済フォーラムの安全を自力で確保することができなくなった。ウクライナに一時停戦を呼び掛けたり、米国の仲介に頼ったりせざるを得ないようだ。

【関連記事】
ロシア、独ソ戦勝利の解釈変更 愛国心鼓舞し失敗を隠蔽
ロシア、国防支出縮減に転換 景気は後退局面へ

 5日のプーチン氏の基調演説は、これまでで最も退屈なものだった。将来に向けた戦略を示す代わりに、改めて「歴史の授業」を行い、「悪い欧州」「衰退する西側諸国」について語り続けた。

 そして投資家に対し、ロシア経済は健全であり、成長の鈍化は意図的かつ管理されたプロセスであると説明した。

 しかし、その言葉はどこまで信じられるだろうか。原油価格の高騰を受け、ロシア経済は回復の兆しを見せているが、年末までに生じる財政赤字は依然、当局の計画よりも大きくなる見込みだ。

 ロシアの軍事予算は歳出の約40%で、ソ連時代以来最高となった25年の41%をわずかに下回った。しかし、シルアノフ財務相が「重要な優先分野に資源をさらに集中させる必要性がある」と述べたように、軍事支出を再び拡大させる方向にある。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »