
米国とイスラエルによるイラン攻撃を受け、ロシアが再び困難な立場に追いやられた。イランと密接な関係にあるものの、今のロシアにとってより重要な課題はウクライナ戦争の終結であり、調停役であるトランプ米大統領との関係を悪化させることはできない。ベネズエラのマドゥロ政権に続き、イランを見捨てたロシアは、国際社会での孤立をさらに深めた。(繁田善成)
わずか数日のうちに、米国とイスラエルの攻撃はイランの政権を存続の危機に追い込んだ。イランは同盟国の支援を必要としていたはずだが、中国も、ロシアもそれに応えることはなかった。
中露は、長い沈黙の後、米国を非難する声明を出し、国連安全保障理事会の緊急会合を招集したが、それだけだ。
中国が使う「同盟国」という言葉は、それほど重いものではない。安全保障まで含んだ同盟国は北朝鮮だけである。ウクライナ戦争におけるロシア、ベネズエラのマドゥロ政権、アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンとの戦争におけるパキスタンなど、中国がこれら「同盟国」を表立って支援することはない。
しかし、それは中国の弱さの表れではない。中国はパートナー国に積極的に投資し、あらゆる資源を購入し、あらゆる物資を供給し、警察を訓練し、指導者を盛大な首脳会談に招待することもできる。
しかし、安全保障に対する責任は負わない。なぜなら、中国はそれを21世紀の大国にとって必要な資質とは考えていないからだ。
イランの現政権が崩壊したとしても、新たな指導部はイラン産原油の主要な買い手である中国と向き合わざるを得ない。
中国は、どのような結果になるか予測できない地域戦争に介入する必要はまったくない。むしろ「岸辺に座って敵の死体が流れてくるのを待つ」方が賢明である。中国にはそれだけの余裕がある。
しかし、ロシアの状況は異なる。泥沼化したウクライナ戦争を背景に、イランとの関係を特に緊密化させてきた。2022年以降、両国は包括的戦略パートナーシップ協定を締結し、軍事協力を大幅に拡大させた。
イランは40億ドル以上の武器、主にドローン「シャヘド」を供給し、ロシアは訓練機、装甲車、小火器、攻撃ヘリを供給してきた。両国は、欧米による制裁を回避する方法を共同で模索し、イランと「ユーラシア経済連合」の間で、自由貿易圏を設立する協定に署名した。
当然ながらイランは、最高指導者ハメネイ師殺害に対する懸念や弔意ではなく、実質的な支援をロシアに期待していた。
しかし、ロシアはウクライナ戦争の終結に向け、調停役であるトランプ政権との交渉を進めている最中だ。ロシアによるウクライナ侵攻は4年を超えた。ウクライナに計り知れない苦しみと損失をもたらしたが、ロシアも国内総生産(GDP)の約10%を失い、年間40万人の死傷者を出している。
イラン攻撃でトランプ氏に公然と反対することは、ロシアにとって最優先課題であるウクライナ戦争終結に向けた交渉で、不利益をもたらすだろう。
ただ、米イスラエルのイラン攻撃で、ロシアが一定の利益を得たことは事実だ。
第一に、世界の注目をウクライナ戦争からそらし、ウクライナが欧米から受けていた援助を再び停止させた。第二に、イランによるホルムズ海峡封鎖はエネルギー価格の高騰を招き、エネルギー輸出国であるロシアの財政状況を改善させる可能性をもたらした。
もっとも、これらの利益は一時的かつ、それほど大きなものとはならないだろう。
ウクライナ戦争以前、ロシアの貿易総額に占める対欧州の割合は42%、対中国は18%だった。しかし25年までに、対欧州は20%を切り、対中は35%に拡大した。
ロシアはかつて欧州に販売していた天然資源を、中国やインドに振り向けたが、買いたたかれているのが実態であり、見返りとしての投資も、技術革新も得られていない。
ロシア弱体化へのプーチン大統領の「功績」は極めて大きい。





