
「私が大統領になったら、戦争は1日で終わらせてみせる」。こう語り昨年、2期目に就任したトランプ米大統領は、就任直後から停戦に向けたロシアとウクライナ両国への仲介を開始した。
トランプ氏は「完全な和平」ではなく、戦闘を止めるための現実的措置を最優先事項に位置付ける。両国に歩み寄りを求め、昨年5月には、米国の仲介の下でロシアとウクライナによる約3年ぶりの直接交渉が再開された。
トランプ氏は政権1期目、ロシアに対する経済制裁の強化や、ウクライナへの殺傷兵器を含む軍事支援の実施など、プーチン露大統領に対し強硬姿勢を貫いていた。2期目になると一転し、首脳間の直接対話を重視する姿勢を見せ、8月に米アラスカでトランプ氏とプーチン氏による首脳会談が実現した。
一方ウクライナに対してトランプ氏は、厳しい一面も見せた。軍事支援を一時停止するなど圧力をかけ、交渉のディールとして利用し、ウクライナのゼレンスキー大統領をロシアとの交渉の席に着かせた。
交渉ではエネルギー施設への攻撃停止や黒海の安全航行確保など、限定的な合意を積み重ね、戦争の激化を抑えることに一定の成功を収めたものの、包括的な停戦には至っていない。
和平交渉で最大の争点となったのが領土問題だ。ロシア側は、戦争終結の条件として現在の占領地をロシア領として認めるよう要求しているのに対し、ウクライナ側はこれを拒否。現在の前線を維持する形での一時的な停戦を主張し、「安全の保証なき和平は再侵攻を招く」として懸念を示している。
そのような中で昨年11月、米政権内で28項目からなる和平案が取りまとめられた。ウクライナに対して東部ドンバス地方など、占領地域の大幅な譲渡を求め、軍備縮小や、北大西洋条約機構(NATO)への恒久的な非加盟を義務付けるなどの厳しい条件が盛り込まれたと報じられた。
一方で、和平合意後の欧州諸国によるロシアへの経済制裁の解除に言及する内容も含まれており、ロシア側の要求を強く反映しているとの批判も高まった。
交渉が進まない現状についてトランプ氏は昨年12月、「(ゼレンスキー氏は)現実的になる必要がある」と語り、ウクライナ国民の8割以上が和平を求めているとの世論調査結果を引用し、「戦争を終わらせる時が来ている」と譲歩を促した。
また、「彼らはいつになったら選挙をするつもりなのか」とも語り、ゼレンスキー氏の大統領としての正当性を疑問視するロシア側の主張に重なる発言も見せた。
停戦交渉についてトランプ氏は、今年6月までを一つの区切りとする時間軸を示していることが報じられた。期限を決めて圧力をほのめかすことで、関係国に決断を迫るトランプ流の取引型外交の表れであり、今秋に予定される米中間選挙を見据え、早期合意を求める思惑があるとみられている。
和平仲介を担うウィトコフ米中東担当特使は、ウクライナが要求する、停戦後の「安全の保証」や、戦後の復興計画などについて、「両国でおおむね合意できている」と述べ、協議の前進をアピールしている。一方で領土問題については協議が難航しているとの見方が強く、6月の期限に向け、妥協点への模索が続く。
(ワシントン川瀬裕也)
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