
米国がベネズエラを攻撃しマドゥロ大統領を拘束したことで、ロシアは対応に苦慮している。南米の同盟国を失った形ではあるが、米国との関係悪化を避けるため批判は限定的だった。一方、成功したベネズエラ急襲と、4年も続くウクライナ侵攻を対比し、ロシア国内の民族派には政府に対する不満も広がった。(繁田善成)
米軍は3日、ベネズエラの首都カラカスで大規模な軍事作戦を行い、マドゥロ夫妻を拘束した。
ベネズエラはロシアの同盟国であり、南米における重要な拠点であるが、その反応は鈍かった。ロシア外務省は短い声明を発しただけで、それも、ベネズエラ攻撃が報じられて3時間以上過ぎてから、外務省の公式サイトに掲載された。
米国に対する最も強い批判は最初に出された声明で、米国の行動を「武力侵略」と呼び、国連安全保障理事会の開催を求めるものだった。次の声明はトーンダウンし、マドゥロ夫妻の拘束について「説明を求める」というもので、3番目の声明は「拘束者の釈放を求める」というものだった。
また、3日のロシア国営放送「第1チャンネル」のニュース番組は、これら外務省の声明を報じなかった。
プーチン大統領は2000年にニューヨークで、ベネズエラのチャベス大統領(当時)と初めて会談し、両国の関係構築を開始した。01年にはチャベス氏とクレムリンで公式会談を行い、航空機や防空システムを含む武器を供与し合同演習を実施した。06年から17年にかけて170億㌦の借款も供与した。
一方でベネズエラは、08年のロシア・ジョージア戦争後、ジョージアから分離・独立を求める南オセチアとアブハジアをロシアが国家承認したことに歩調を合わせ、両地域を国家承認した。
チャベス氏が死去し、13年にマドゥロ大統領が後継者になった後も、両国関係は拡大した。ロシアが14年にウクライナのクリミアを併合すると、ベネズエラもクリミアをロシア領として承認した。ロシアのウクライナ侵攻も支持している。
マドゥロ大統領はプーチン大統領を「われわれの友人、われわれの兄」であり、世界で最も偉大な指導者の一人と呼んでいた。そして昨年5月、ロシアの対独戦勝記念パレードに参加するため訪露し、両国間の「包括的パートナーシップ協定」に署名した。
ロシアが米国を強く批判できない背景には、ウクライナ和平交渉を巡る駆け引きでの失敗がある。
ロシアは昨年末、「ウクライナがプーチン大統領の公邸を攻撃しようと試みた」と主張し、和平仲介を進めるトランプ米大統領をロシア側に引き寄せようと画策した。しかし、この主張は米中央情報局(CIA)に否定され、当初は「非常に怒りを感じる」と語っていたトランプ氏も「そのような攻撃は信じていない」と立場を変えた。
これ以上トランプ氏を刺激したくないロシアは、ベネズエラ攻撃批判のトーンを下げざるを得なかった。さらにトランプ氏は、マドゥロ大統領の後任として、ロドリゲス副大統領を支持すると発表した。これでロシアには選択肢がなくなり、ロドリゲス氏の暫定大統領就任を歓迎する声明を出すに至った。
ただ、どちらにせよ、ロシアが南米における同盟国を失ったことに違いはない。
一方、ロシアの民族派の間では、トランプ政権がベネズエラ急襲を成功させたことと、4年も続くロシアのウクライナ侵攻を対比し、「なぜわれわれは同じようにできなかったのか」と不満が広がっている。
一部では、トランプ氏の「ドンロー主義」により米国が西半球を自らの勢力圏と定義するなら、ロシアもウクライナなど周辺諸国を「勢力圏」とする主張の追い風になるとの見方もある。
だが、ロシアはウクライナ侵攻で身動きが取れない。シリアのアサド政権に続き、マドゥロ大統領も見捨てる形となった。この上、米国がイランでも政権交代に成功すれば、プーチン政権は弱体化せざるを得ないとの見方も広がっている。






