トップ国際欧州・ロシアウクライナは領土で譲歩の用意 ロシアは治安部隊展開を要求

ウクライナは領土で譲歩の用意 ロシアは治安部隊展開を要求

ウクライナのポドリャク大統領府顧問=2023年1月10日、キーウ(キエフ)(AFP時事)
ウクライナのポドリャク大統領府顧問=2023年1月10日、キーウ(キエフ)(AFP時事)

 ロシアによるウクライナ侵攻の終結に向け、トランプ米大統領による調停が続く中、ウクライナは、非武装地帯の設置を受け入れる考えを示した。和平の条件としてきた「領土の一体性」を取り下げた形だ。一方のロシアは、非武装地帯にはロシアの治安部隊が駐留するとし、ドンバス地方を支配する考えを改めて示した。(繁田善成)

 ウクライナが米国側に示した和平の修正案は、ドンバス(同国東部ルハンスク、ドネツク両州)地方の現在の前線の両側に、非武装地帯を設ける、というものだ。

 ウクライナ大統領府長官顧問で、ウクライナ代表団の一員として交渉に参加しているポドリャク大統領府長官顧問は、「非武装地帯への外国部隊の駐留と監視活動は、ウクライナにとって必須条件である」と述べた。

 ウクライナは「領土の一体性」を和平の前提としていたが、譲歩し、ドンバス地方の大部分を、ロシアの占領地として事実上認めることになる。

 これに対しロシアのウシャコフ大統領補佐官(外交担当)は12日、非武装地帯の設置を容認する一方で、次のように述べた。

 「(非武装地帯から)ロシア軍もウクライナ軍も撤退することは十分に可能だ。しかし、ロシア国家親衛隊やロシアの警察など、秩序の維持と、住民の生活のために必要なすべての部隊を駐留させることになる」

 これはすでに「非武装地帯」ではない。ちなみにロシア国家親衛隊とは、旧内務省軍などを再編し発足した準軍隊のことである。

 ウシャコフ氏の考え方は、次のようなものだろう。

ロシアのウシャコフ大統領補佐官=10日、モスクワ(AFP時事)
ロシアのウシャコフ大統領補佐官=10日、モスクワ(AFP時事)

 ロシアは2022年10月、ウクライナのドネツク、ルハンスク、ザポリージャ、ヘルソンの4州を併合し、国内の法的手続きを完了した。ドンバスはすでにロシアの領土である。軍事作戦が終わりウクライナ軍が去れば、ロシア軍も撤退する。その後、ロシアの領土の治安維持のために、ロシアの治安部隊が展開するのは当然のこと――。

 ロシアは今年11日、ドネツク州の要衝シベルスクを制圧したと発表した(ウクライナは否定)。もしそうならば、ドネツクに残るウクライナ支配下の2大都市の一つ、スラビャンスク攻略の足掛かりを得たことになり、ドネツク全域の占領に一歩近づいた形だ。

 ウシャコフ氏の木で鼻をくくったような対応は、ドネツク全域の完全支配を譲る気はない、という意思の表れだろう。

 ところで、ロシアのプーチン大統領は2023年、「文明国家」という新たな外交政策概念を承認した。「西側世界への参入」という原則から脱却し、ロシアを「独自の国家文明国」と宣言。東洋でも西洋でもない「ロシア文明」という独自の価値観と規範に基づく、独自の外交政策を展開する、というものだった。

 その概念を深化させたものとして今年10月、国内外の有識者らが集まるバルダイ会議で提唱されたのが「カオス理論」だ。以下のように要約できる。

 現代の国際社会は、2極体制でも、多極構造でもない。かつての秩序が機能せず、急速に変化する混沌(こんとん)とした社会である。この混沌とした社会で勝利を収めるのは、自らの利益に合わせて柔軟に政策を変化させ、「創造的な解決策」を見つける者だ。道徳と倫理はもはや政治において重要な意味を持たない。いかなる行動も国益によって正当化される。新しい世界秩序が形成される過程で紛争は増加する。軍事力こそが生存のカギである。

 ウクライナに対する一方的な侵攻や、4州の一方的な併合、エネルギー施設などウクライナ民間インフラの組織的な破壊など、カオス理論に沿った行動のようだ。

 ウクライナは和平に向け、領土問題で譲歩に踏み切ったが、ロシアが歩み寄る気配は見えない。

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