トップ国際欧州・ロシア米大統領、核実験再開を指示 中露への「プレゼント」指摘も

米大統領、核実験再開を指示 中露への「プレゼント」指摘も

 【ウィーン小川敏】トランプ米大統領は30日、核実験の即時再開を国防総省に指示した。自身のSNSへの投稿で、「他国の核実験計画を踏まえ、公平な条件でわが国の核兵器実験を開始するよう指示した」と述べた。実験対象となる核兵器や核実験の種類(大気圏内、地下、大気圏外、水中)については言及を避けた。

 核実験再開宣言は、韓国で習近平国家主席と会談する直前に出された。核実験の主な目的は、核兵器の開発・性能確認と性能維持だ。また、核爆発を伴わない臨界前核実験という形では、核兵器の近代化や維持管理に必要なデータを収集する目的がある。

 西側の核専門家は「トランプ氏の核実験再開宣言はロシアや中国へのプレゼントとなる」という。米国が核実験を実施すれば、両国は国際社会から大きな批判を受けずに堂々と核実験できるからだ。特に中国は核実験の回数が米国やロシアと比較して圧倒的に少ない。核実験を増やすことで核兵器の性能向上を図りたいはずだ。

 米国が実施した最後の核実験は1992年9月23日。この年、当時のブッシュ大統領は地下核実験のモラトリアム(一時停止)を発表した。米国が核実験を再開すれば33年ぶりとなる。国際社会からの反発は必至だ。

 核実験を再開した場合、ウィーンに拠点を置く包括的核実験禁止条約(CTBT)は決定的なダメージを受けるだろう。核保有国5カ国(米露中英仏)は核実験のモラトリアムを堅持してきたが、モラトリアムが消滅した場合、核の拡散にストップをかけることが一段と難しくなる。

 トランプ氏が核実験再開に踏み切った背景について、ロシアによる最近の核戦力の強化があると受け取られている。プーチン大統領は29日、原子力無人潜水艇「ポセイドン」の実験に成功したと宣言した。その威力は新型の大陸間弾道ミサイル「サルマト」を凌駕(りょうが)するという。

 ロシアは10月21日に新型の原子力巡航ミサイル「ブレベストニク」の試験を実施し、10月22日には核兵器演習を実施した。ほぼ無限の長距離飛行が可能で、米国のミサイル防衛網を突破することを目的としている。

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