トップ国際欧州・ロシア愛国心高まるロシア 背景にウクライナの越境攻撃 ドローンで欧州を牽制 【ワールドスコープ】

愛国心高まるロシア 背景にウクライナの越境攻撃 ドローンで欧州を牽制 【ワールドスコープ】

7日、ロシア北西部サンクトペテルブルクの大聖堂を訪れたプーチン大統領(AFP時事)
7日、ロシア北西部サンクトペテルブルクの大聖堂を訪れたプーチン大統領(AFP時事)

 ウクライナがロシアの石油関連施設への攻撃を強化し、ロシア全土でガソリンが不足するなど影響が広がっているが、この「戦争の影響」が愛国心を鼓舞し、プーチン政権への支持を高める結果ともなった。一方でロシアはウクライナの継戦能力を弱体化させるため、欧州にドローンを侵入させる動きに出ている。(繁田善成)

 ロシアのプーチン大統領は10月7日、73歳の誕生日を迎えた。

 クレムリンはこの日、世界40カ国以上の首脳から祝辞が届いたと発表した。ロシアのメディアは、プーチン大統領が、世界の多くの首脳から祝辞を受けたことをこぞって報じ、ロシアが世界から孤立していないことをアピールした。

 祝辞は外国首脳からだけでなく、ロシア国民や、さまざまな団体からも寄せられたが、これは、ブレジネフ書記長時代のソ連の伝統を踏襲したものだ。

 当時のクレムリンは、党や経済団体、労働組合、そして国家保安委員会(KGB)が承認した「一般のソ連労働者」から、「親愛なるレオニード・イリーチ(・ブレジネフ)」宛ての祝電を受け取っていた。

 唯一の違いは、プーチン大統領への祝辞がクレムリンに電報で送られるのではなく、祝辞を送った組織・団体の公式ウェブサイトに掲載され、また、さまざまなSNSやメッセージアプリに投稿され、その内容を公表していることだ。

 祝辞の内容をまとめると以下のようになる。「感謝の気持ちを抱く同胞たちは、敬愛する指導者の下にあることを喜び、あらゆる努力と夢を共にし、プーチン大統領を支持している…」

 ロシアの各地方政府は、プーチン大統領の誕生日を独自の祝賀行事で祝ったが、その先頭に立つのはチェチェン共和国だ。首都グロズヌイ競馬場で記念レースを開催し、プーチン大統領の名を冠した住宅団地のオープニングセレモニーを行い、そして、一連の祝賀行事を壮大な花火大会で締めくくった。

 このような動きを、ロシアの国民は冷めた目で見ているのかと言えば、実はそうではない。

 ロシアの世論調査機関「レバダセンター」の最新の調査結果は、以下の通りだった。

 「ロシア経済を誇りに思う」との回答は69%だった。2003年の同じ調査の回答(14%)の5倍近い数字だ。この回答の割合が多かったのは女性(71%)、富裕層(72%)などだった。

 「ロシアの民主主義を誇りに思う」との回答は61%だった。03年(13%)の4・6倍だ。18~24歳(98%)、富裕層(67%)などだった。

 「ロシアの国際的影響力を誇りに思う」との回答は75%だった。03年(29%)の2・5倍だ。18~24歳(78%)、モスクワ市民(85%)、富裕層(80%)などだ。

 「ロシアの歴史を誇りに思う」との回答は93%に達した。03年(72%)の1・5倍だ。24歳未満の若者(98%)、プーチン大統領支持者(96%)だった。

 政府による監視と統制を恐れ、ロシアを称賛する回答をした人々も多く含まれるだろう。しかし、それを差し引いても、この数字は大きい。

 これら回答結果のベースには、プーチン政権によるメディア統制や改革派の封じ込めや、徹底した歴史・思想教育が存在する。

 一方でここ数カ月、ロシアの多くの人々が、ウクライナによる越境攻撃の影響をじかに感じたことで、ロシアへの「誇り」と愛国心を高めたことが、この結果をもたらしたとの分析もある。

 ウクライナがロシアの石油関連施設への攻撃を強化したことで、ロシア全土でガソリン不足が顕在化した。現地メディアによると、一次石油精製能力の38%がすでに失われた。また、モスクワを含めた各地へのドローン攻撃により、空港の一時閉鎖が相次いでいる。

 ただ、ロシアが同様な方法でウクライナに報復することはない。ロシアはすでに、3年前からウクライナのエネルギー施設を爆撃している。

 そのロシアが、ウクライナの継戦能力を弱体化させるために行ったのが、欧州へのドローン侵入である。

 ロシアのドローン部隊が9月10日、ポーランドで目撃され、一部が迎撃された。その後も、ルーマニア、ドイツ、ノルウェー、デンマークで複数回、ロシアのドローンが侵入している。

 これは、欧州の人々に対する、ウクライナを今後も支援するならば、金銭的な負担以上のものを強いられるだろう、というメッセージだ。

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