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ロシアと連携した中国の台湾侵攻に備えよ

戦争学研究家 上岡龍次

ロシアとドローン

 9月になるとロシアのドローンがポーランドを領空侵犯してNATOは警戒した。その後もロシアのドローンが領空侵犯することが確認され、9月19日にはロシアのミグ31戦闘機3機がエストニアの領空を侵犯した。同じ19日にイギリスはポーランド防衛のためにタイフーン戦闘機を飛行させた。

 欧米はロシアの航空機が領空侵犯した場合は撃墜すると警告。これに対してロシアは戦争を招くと批判した。このような状況でウクライナ軍総司令官は「ロシアの春・夏の作戦は失敗」と指摘した。ロシア軍が弱体化していることは明らかだが、そんな時にロシアが中国空挺部隊に装備や訓練を提供しているという文書が流出した。

ロシアは約500機のドローンと40発以上のミサイルを発射し、キエフ郊外でロシアによる空襲があった。甚大な被害を受けた住宅の跡地で火災が発生し、ゼレンスキー大統領によると、攻撃は12時間以上続いたという。(2025年9月28日/UPI)
ロシアは約500機のドローンと40発以上のミサイルを発射し、キエフ郊外でロシアによる空襲があった。甚大な被害を受けた住宅の跡地で火災が発生し、ゼレンスキー大統領によると、攻撃は12時間以上続いたという。(2025年9月28日/UPI)

弱体化するロシア軍とプーチン大統領の対策

 ロシアは2022年にウクライナに侵攻したが未だに勝利できない。それどころか人的損害を外国人に依存するまで兵力不足に陥っている。そんな時にウクライナ軍のドローンがロシアのインフラを攻撃。特に石油施設への攻撃はロシアで石油不足を発生させたと見られている。

■ウクライナ軍総司令官、ロシアの春・夏の作戦は失敗と指摘
https://jp.reuters.com/world/ukraine/GW4HL7BXEBPVBFG2TDDYSSNXBE-2025-09-26/

 燃料がなければ国内輸送と戦場への補給もできない。さらに戦場の部隊は燃料がなければ戦闘ができない。人的損害の多さと燃料不足であれば補給が途絶え戦車・歩兵戦闘車などを用いた機械化部隊の攻撃は減少する。そうなると歩兵の攻撃になるが、燃料がなければ補給が途絶えて前進できない。

戦闘部隊が攻撃または防御を中止した理由。第二次世界大戦からの師団から大隊規模の戦例50
【敵の戦術的な機動攻撃を受けた→60%】
 ・包囲・突破・退路遮断→33%
 ・緊要地形の喪失   →6%
 ・敵からの奇襲    →8%
 ・隣接する部隊の退却 →13%

【相対的戦闘力の格差が増大→18%】
 ・敵に増援が来着   → 4%
 ・自軍の予備戦力の枯渇→ 12%
 ・兵站補給の枯渇   → 2%

【戦闘を継続できない損害→12%】
 ・接近戦が原因    →10%
 ・砲爆撃が原因    →2%

【戦闘の外部条件→10%】
 ・天候・気象の変化→2%
 ・退却命令    →2%
 ・戦争の停止   →6%   

International TNDM Newsletter,Dec 1997

 ロシア軍は今年の春から攻撃を続けたがウクライナ軍主力を撃破できなかった。最初は一部の部隊がウクライナ軍戦線を突破したが突破口を拡大できなかった。ロシア軍は突出部を維持していたがウクライナ軍の反撃で今では包囲されるか撤退するかの選択に迫られている。この場合は上記の相対的戦闘力の格差が増大した18%に該当する。

 そして今後のロシア軍は敵の戦術的な機動攻撃を受けた60%に移行し、突出部を下げて戦線の縮小をすることになる。だが戦線の縮小に失敗すれば戦線全体が崩壊して総崩れに陥る。これを隠す目的かは不明だが、バルト海付近で未確認のドローンが確認されるようになった。これをロシアのドローンと仮定すれば、ウクライナと別の空間に新たな脅威を作ることでNATOの戦力を分散させる試みだと推測する。つまり陽動作戦が目的。

流出したロシアと中国の関係

 ハッカー集団「ブラックムーン」が機密情報を流出させ、イギリスのシンクタンク「王立防衛安全保障研究所(RUSI)」が文書を検証した。ロシアは2023年に中国人民解放軍に対して軍装備品を売却し、それらを使用する中国空挺部隊の訓練に当たる内容だった。

■ロシア、中国空挺部隊に装備や訓練提供か 英シンクタンクが流出文書を精査
https://www.cnn.co.jp/world/35238516.html?ref=rss

 これらの内容が公開されるタイミングを見ると、意図的にロシアと中国の関係と中国による台湾侵攻が近いことを示唆していると見るべきだ。以前からロシアと中国が連携していることが知られているが、ウクライナ侵攻で頓挫したロシアから見れば中国の台湾侵攻は願望に近い作戦になる。

 何故なら仮にNATOが参戦するとロシア軍は敗北する。この状況で中国が台湾侵攻を行えばアメリカ軍の戦力は分散するか、もしくは中国との戦争に戦力を集中する。こうなればロシアは都合が良いと考える。それに中国としてもロシアとの連携作戦は都合が良い。ロシアがNATOを拘束するならアメリカ軍も拘束される。

 アメリカはロシアと中国の二正面作戦になるが、ロシアと中国の正面は一つ。これは兵站から見るとアメリカ軍には不利な状況になる。ロシアと中国がこのことを2023年から連携して準備していたと仮定すれば、弱体化したロシア軍がヨーロッパでNATOを拘束し、中国が台湾侵攻すれば理想的な攻撃案になる。

イギリスが意図的に流した可能性

 仮に中国が台湾侵攻を行う場合は海を隔てた渡洋作戦になる。これは地上戦の河を渡る渡河作戦とは異質な作戦。地上戦では制空権がなくとも砲撃支援の下で地上部隊が渡河することが可能。それに対して渡河作戦では第1段階として制空権の獲得、第2段階として制海権の獲得、第3段階として渡河作戦になる。

 ロシア軍は渡洋作戦と上陸作戦を行った経験はない。さらに台湾侵攻で空挺部隊を投入するのは自殺行為。中国側が制空権を獲得する前に空挺部隊を投入すると台湾空軍に撃墜される。だからセオリー無視の訓練だから、仮に実行すれば中国側が100%敗北することを断言する。

 仮に中国が台湾侵攻を実行するなら台湾の対岸に空軍基地を複数配置する。さらに空軍基地の防衛として周辺に防空ミサイル部隊を配置。この後に中国と台湾の空軍機が半年から1年かけて制空権を争奪する。制空権の争奪はこのように半年以上必要で、今のウクライナ・ロシア戦争でも2年以上経過しても制空権の争奪戦は続いている。

 中国側が台湾空軍から制空権を奪い、それから制海権の争奪に半年から1年かける。これが戦争史が導き出した結果だから、作戦開始前には1年以上も戦闘継続できる物資の生産と備蓄が必要になる。

 実際に2022年にロシア軍はウクライナに侵攻したが、ロシア軍は侵攻前に軍事演習を名目に物資の移動と備蓄を繰り返していた。これが欧米の監視に発見されロシア軍によるウクライナ侵攻が察知された。中国共産党がこの基本を無視し、最低限の物資と空挺部隊を用いた奇襲攻撃で最短最速の勝利を求めても不思議ではない。仮に中国共産党がテロ組織ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃を参考にしたと仮定すれば、台湾本土に空挺部隊を投入して台湾空軍基地を占領するだろう。

 これが想定されるから、この時期にイギリスが意図的に公開して注意喚起をしていると見るべきだ。しかもNATO圏は謎のドローンが飛行しているので、背後でロシアがNATOを拘束する動きに見える。そんな時に中国が台湾侵攻を行えばロシアのプーチン大統領には好都合。何故ならウクライナへの支援が減少し、代わりに台湾への軍事支援が増加する。

日本の政治家は理解できない

 中国が台湾侵攻を行うなら物資備蓄を無視したテロ組織ハマス形式の奇襲攻撃を行うことは間違いない。これは成功すれば精神的なダメージが大きくアメリカ軍の展開も遅れる。さらに日本政府の対応は不可能。全てがアメリカ頼みになるから、結果的に自衛隊はアメリカ軍との共同作戦を行うことで動けるようになる。

 だが台湾軍は中国共産党がテロ組織ハマスの奇襲攻撃を参考にしていることを察知している。このため奇襲攻撃に備えた訓練をしていれば、中国が空挺部隊を用いた奇襲攻撃を行っても対応されたら終わり。さらに中国側の奇襲攻撃で台湾空軍基地を占領できなければ全ての作戦が破綻する。

 このため日本政府は理解できないから台湾軍の対応次第。悲しいことに台湾軍とアメリカ軍の対応が日本政府に答えを与え、日本政府は与えられた答えに従うことは間違いない。この間に日本国内で中国共産党が仕組んだ破壊活動が行われた場合は、警察と自衛隊の損害が出ることは避けられない。何故なら日本政府は理解できないから決断が遅れるからだ。

(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)

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