トップ国際欧州・ロシアウクライナから手を引く米 存在感増す英仏

ウクライナから手を引く米 存在感増す英仏

●ウクライナ情勢は今も続いている

トランプ大統領がウクライナとロシアの停戦が短期間で成立すると豪語したが4月になっても停戦が成立していない。トランプ大統領はウクライナに対して地下資源を停戦の見返りに求めたが調整に難航しトランプ大統領が激怒した。それに対してロシアのプーチン大統領には友好的でプーチン大統領が曖昧な言動を行ってもトランプ大統領は怒らない。

さらにトランプ大統領がドイツに駐留するアメリカ軍を移転させることを仄めかすと、ヨーロッパ諸国は危機感を増した。特にイギリスとフランスはウクライナへの外国部隊派遣に積極的でゼレンスキー大統領は歓迎している。

●イギリスとフランスの存在感が拡大

NATOは冷戦期のアメリカが主導して成立したがトランプ大統領はNATOがアメリカを守らないと誤解している。第二次世界大戦で連合軍は戦争に勝利したが戦後は戦勝国同士が東西に分かれて対立した。これが冷戦と呼ばれNATOとワルシャワ条約機構の軍事同盟同士の睨み合いが続いた。

第二次世界大戦後の戦争は国家が敵国を征服・併合したり政権を転覆させるような全面戦争は減少。その代わりに戦争目的を限定した限定戦争が80回近く発生している。これには講和条約はなく停戦・休戦で次の戦争準備をしている。

第二次世界大戦後の戦争の仕方はテロ・ゲリラ戦・襲撃戦・航空攻撃・封鎖・拿捕を含む海上戦・地上戦まで多様。冷戦期のアメリカとソ連は核戦力を背景にした覇権の現状維持と現状打破の間接的な戦争だった。当時のアメリカとソ連は核兵器を背景にお互いに脅すが直接戦争することはなかった。代わりに代理戦争でテロ・ゲリラ・地域紛争で覇権の争奪戦を行っている。

■ゼレンスキー氏、英仏と部隊派遣協議 「1カ月以内に準備整う」
https://jp.reuters.com/world/ukraine/B75VC2AFZBKFNDYPD642BA5VBM-2025-04-05/

アメリカはバイデン前大統領の時は積極的にウクライナを軍事支援していた。これは間接的な戦争で、仮想敵国であるロシアとウクライナを使い代理戦争をしていた。これはアメリカとロシアの冷戦であり、戦争の一歩手前の覇権争いが行われた。

ウクライナの平和と安全保障に関する首脳会談参加のためパリのエリゼ宮でウクライナのゼレンスキー大統領を出迎えるマクロン仏大統領。2025年3月26日/UPI

■国家関係の状態区分
協力・友好・融和・不和・緊張・対立・戦争

冷戦は「不和・緊張・対立」で覇権を争うが、トランプ大統領に代わるとウクライナとロシアの即時停戦に向けて動いている。これはアメリカがウクライナから手を引くことを意味する。

トランプ大統領の動きに即座に動いたのがイギリスとフランス。両国は過去に世界の中心だった国であり、再度世界の中心に戻る野望を持っている。今のイギリスとフランスにはアメリカに代わる国力はないが覇権拡大は可能。トランプ大統領がウクライナから手を引くことは覇権拡大の好機だと判断したからだ。

●集団的自衛権は戦争を遠ざける

結論から言えば戦争はパワーバランスが崩れた時に発生する。仮想敵国が弱いと判断したら戦争になる。この典型例がイラクによるクエート侵攻(1990)。このイラクによるクエート侵攻は後の湾岸戦争(1991)に拡大しており、単独だとウクライナのように2022年にロシアから侵攻を受けている。

NATOは集団的自衛権の軍事同盟であり、同盟国が侵攻を受けると加盟国が参戦する。このため余程の覚悟がなければNATOを攻撃できない。ロシアから見てもウクライナがNATOに加盟するとロシアの覇権拡大が潰される。だからロシアはウクライナがNATOに加盟する前に侵攻した。本来であればロシアは短期間でウクライナを占領しロシアの領土と覇権を拡大するはずだったが、ゼレンスキー大統領の指導力とウクライナ軍の死闘がロシア軍を撃退する逆転劇を発生させた。

ロシアのウクライナ侵攻は2025年になっても続いており、初期段階ではロシア軍が勝利できると言われていたが未だにロシア軍は勝利出来ていない。これは欧米による軍事支援も影響するが、根本的にウクライナ軍は戦力不足。初期段階で欧米がウクライナに軍隊を派遣していればロシア軍は敗北していた。
だが欧米はロシアと冷戦をしているから軍隊派遣は忌避された。直接戦争すると自国も損害を受けるので軍事支援で間接的な戦争をすることでロシアの弱体化を選んだ。これは上手く進んでいたが、トランプ大統領がロシアに傾倒したことでロシア軍の敗北が見えなくなった。これでは困るのでイギリスとフランスがウクライナへの軍隊派遣を積極的に進めている。

イギリスとフランスから見れば覇権拡大の好機であり、同時にロシアの覇権が拡大するとヨーロッパ全体が戦場になる可能性で動いている。アメリカのトランプ大統領から見れば対岸の火事だがイギリスとフランスから見ると自宅が燃える可能性が高い。だからアメリカ軍に頼れないことを前提にイギリスとフランスの軍隊でウクライナと集団的自衛権でロシアのプーチン大統領に挑んでいる。

プーチン大統領から見ればウクライナ単独の戦争であればウクライナ領の一部でも獲得できれば勝利宣言できる。だがイギリスとフランスの軍隊がウクライナに駐留することは戦争してもロシアは勝てないことになる。

●核戦力で脅すなら戦争しない

ロシア・イギリス・フランスは核保有国だから核戦力で脅すはずだ。これは悪いことではなく良いことだ。何故なら核戦力で脅し合うなら冷戦であり、仮に核戦力を戦争で使えばお互いの首都が核攻撃を受ける。これでは自殺と同じだから冷戦期は核戦争が発生しなかった。

だがイギリスとフランスがウクライナに軍隊を派遣すればプーチン大統領は核戦争を匂わせるだけ。仮に戦争になっても通常戦力によるテロ・ゲリラ戦・襲撃戦・航空攻撃・封鎖・拿捕が何年も行われるだろう。

国連はウクライナとロシアの停戦を行うことは出来ない。何故なら国連は第二次世界大戦の戦勝国が集団指導体制で管理することが目的の組織。実際に国連憲章の53条と107条は日本とドイツを「敵国」として憲章が適用されない状態にしている。

国連は内政不干渉の原則を用いて戦勝国以外の国が戦争して弱体化させることが目的。だから国連はウクライナとロシアの停戦を行わない。これが国連の現実だからイギリスとフランスのように直接軍隊をウクライナに派遣しなければ停戦と戦争回避は行えない。

(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)

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