ロシアで9月6日から8日にかけて統一地方選が行われ、与党「統一ロシア」が圧勝した。野党への締め付けはさらに強まっており、多くの選挙区で事実上、与党候補だけの無風選挙となった。プーチン政権はこの結果を自賛しているが、社会の閉塞(へいそく)感は強まっている。(繁田善成)
今回の統一地方選では、21の連邦構成主体で首長選挙が行われ、うち20で「統一ロシア」の候補が当選した。このほか、13の地方議会や20の市議会でも選挙が行われ、「統一ロシア」が圧勝した。
ウクライナ軍が越境攻撃を進めるクルスク州でも、「統一ロシア」が指名したスミルノフ知事代行が当選を決めた。
さらに、ロシアが部分的に占領するウクライナ東部のルガンスク、ドネツク、ザポロジエ、ヘルソンの4州でも初めてロシアが地方選を実施し、「統一ロシア」が勝利したという。順当な結果といえば、その通りだろう。
思い起こせば、ロシア下院選挙での不正疑惑を発端として、選挙のやり直しを求める人々が立ち上がった2011年の大規模抗議運動「反プーチンデモ」が、ロシアの民主主義運動のピークだった。
政権が彼らの声に耳を傾けることはなく、逆に、言論統制や野党勢力への締め付けが強化され、自由を求める人々の間には無気力感が広がっていった。
それでも政権に立ち向かった反政権指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏は暗殺未遂などを経て投獄され、今年2月に獄中で死亡した。
22年のウクライナ侵攻開始後、侵攻に反対する野党勢力などに対する締め付けが強化され、その多くは国外に脱出するか、もしくは投獄される状況となった。ロシアの民間選挙監視団体ゴロスによると、1000万人以上が被選挙権を剥奪された。
ネットでは外国のメディアが遮断された。ウクライナ侵攻について「政府の公式発表と異なる情報」を報じた場合、「虚偽の流布」として懲役刑が科せられるなど、言論統制がさらに強化された。
プーチン政権が導入を進める電子投票では、投票結果が操作されているのではという見方も出ている。匿名性が担保されていない恐れもあり、与党系候補以外に投票することをためらう人々もいるだろう。独立性を持った選挙監視システムも存在しない。
今回、名ばかりの選挙が実施され、与党の候補が権力の座に就いたにすぎない。ペスコフ大統領報道官は「人々は投票で政権を支持した」と自賛するが、それとは裏腹に、社会の閉塞感は広がっている。
ロシア連邦統計庁が9日に発表した最新の統計によると、ロシアの今年上半期の出生率は、1999年以後25年ぶりに最低値を記録した。出生数は59万9600人で、昨年同期比で6%減少した。特に6月の出生数は9万8600人で、史上初めて10万人を下回った。
ちなみに、2024年第1四半期の死亡率は前年同期比で4・4%増加する一方、中央アジアなどからの移民の流入も急減した。しばらく前までは、中央アジアなどの出稼ぎ労働者はロシアに来るのが当たり前だったが、彼らは今、ロシアではなくアジアや欧州に向かっている。ウクライナ侵攻で制裁を受け、ロシア市場の魅力が低下したことが主因だ。
ロシアの人口動態予測で、最悪のシナリオでは、今の約1億4615万人の人口が、2100年には6700万になるというが、その予測が現実味を帯びつつある。