【パリ安倍雅信】欧州連合(EU)が1年前、欧州中央銀行(ECB)のドラギ前総裁(77、イタリア前首相)に作成を依頼していたEUの経済再生に関する報告書が9日、公表された。
報告書は、米中貿易摩擦の間で埋没する欧州の競争力を向上させるため、加盟各国が協調して産業政策に取り組み、民間と公共で年間8000億ユーロ(約127兆円)の大規模追加投資を加盟国の共通目標として提案したが、悲観的な受け止めが主流だ。
提案について米政治ニュースメディアのポリティコ欧州版は、ドイツの反対などで、巨額投資が実現する可能性は低いとして、手遅れとの見方を示した。
ドラギ氏はブリュッセルでの記者会見でEU経済について「現在の状況を非常に憂慮する」との見解を示したが、欧州委員会が、ドラギ氏と同じ危機感を共有できるかが問われている。
EUは20年前に始まったデジタルトランスフォーメーション(DX)政策で後れを取り、人工知能(AI)などの専門家が不足、育成体制も十分ではない。だがEU全体でこの問題に取り組む努力はなされていないと指摘されている。
また基幹産業の一つである自動車産業では、中国の電気自動車(EV)の進出に押され、ドイツでは同国を代表するフォルクスワーゲン社が初めて、一部の生産ライン停止を発表した。