「貧者の神父」が性的暴行 カトリック教会に衝撃―フランス

フ ラ ン ス の ピ エ ー ル 神 父 = 1 9 8 7 年 12 月 、 北 部 ル ー ア ン 近 郊 ( A F P 時 事 )

フランスのローマ・カトリック教会の著名な聖職者で、慈善活動を通じて“貧者の神父”として知られたピエール神父(1912~2007年)が生前、複数の女性に対して性的暴行を繰り返していたことが明らかになった。欧州の代表的なカトリック教国フランスの国民に衝撃を与えている。(ウィーン小川 敏)

バチカンニュースは7月18日、「ピエール神父は、フランスにおける社会的取り組みの象徴であり、長い間最も有名な聖職者として知られてきた」とした上で、「1970年から2005年にかけて複数の女性に対して性的な暴行を行っていたことが明らかになった」と報じた。慈善団体「エマウス運動」が17日に発表したところによると、7人の女性の証言があり、ピエール神父による性的な発言や望まれない接触に言及している。

医師で心理療法士のイザベル・シャルティエ・シベン氏はカトリック系ラジオ局rcfとのインタビューで、「キリスト教信者だけでなく、一般の人々にとってもショックだ。彼の勇気と寛大さを称賛してきたからだ。教会を貶(おとし)めるためのキャンペーンだと思う人もいるかもしれないが、今出されている報告書を読む限りでは、これは中傷ではなく、実際にそのような性的暴行があったと考えざるを得ない。私たちのピエール神父のイメージを完全に変えてしまう。大きな痛みだ」と述べている。

バチカンニュースは「白いひげ、マント、ベレー帽のピエール神父への敬意はキリスト教徒の枠を超えて広がっていた。ピエール神父は宗教的な人物としてだけでなく、慈愛の象徴として認識されてきた。それだけに、今回の告発の影響は一層大きい」と報じている。

ピエール神父の本名はアンリ・アントワーヌ・グルエ、フランスのリヨンで生まれた。第2次世界大戦中、レジスタンス運動に参加し、ナチスに対する抵抗活動を行い、フランス内外のユダヤ人や他の迫害された人々を救うために尽力した。

その後、貧困者やホームレスを助けるため1949年にエマウス運動を創設し、今日、約40カ国で貧困とホームレスに取り組んでいる。54年の寒波の際、フランスのラジオ放送で緊急呼び掛けを行い、ホームレスのために支援を求めた。この呼び掛けは大きな反響を呼び、フランス国内外から寄付やボランティアが集まり、多くのホームレスが救われた話はよく知られている。

また、88年に設立されたアベ・ピエール財団は、住宅の促進、老朽化した住宅の改修、ホームレスシェルターの提供に取り組んでいる。

シベン氏は「彼は多くの家族を救ったが、これは偉大な人物を神格化してはならないという教訓だ。いかなる人物も最終的には他の人々と同じように過ちを犯すことがある」と語っている。

フランスのカトリック教会司教協議会は17日、「神父の不祥事を知ることは深い悲しみだ」と述べる一方、告発した女性たちの勇気に感謝を示した。

フランスで2021年10月5日、1950~2020年の70年間に、少なくとも3000人の聖職者、神父、修道院関係者が約21万6000人の未成年者に性的虐待を行っていたこと、教会関連内の施設での性犯罪件数を加えると、被害者の総数は約33万人に上るという報告書が発表された時、ローマ・カトリック教会の総本山、バチカン教皇庁だけでなく、フランス教会外の一般の人々にも大きな衝撃を与えた。ピエール神父の性犯罪容疑はそれに匹敵するほどの衝撃を国内外に投げ掛けている。

尊敬され、人々を鼓舞してきた貧者の神父の不都合な事実をどう受け取るべきか、多くの人々が苦悶(くもん)している。

spot_img
Google Translate »