仏下院選、マクロン氏の誤算 右派台頭、想定外の左派結集

6月30日、北部ブローニュシュルメール近郊で、フランス 国民議会選の第1回投票を終え、支援者と写真を撮る マクロン大統領(右から3人目)(EPA時事)

仏下院選挙は6月30日に実施した第1回投票で、右派・国民連合(RN)が議会単独過半数をうかがう勢いなのに対して、マクロン中道連合のアンサンブルは20%と第3勢力に後退した。第2位には左派連合の新人民戦線(NFP)が躍り出て、第2回投票でRN以上の得票を目指す。解散総選挙に踏み切ったマクロン仏大統領の誤算は何だったのか。(パリ安倍雅信)

選挙前の世論調査会社の有権者の投票意向と、第1回投票の結果の間に大きな開きはなかった。同時に解散から3週間という短い準備期間だったにもかかわらず、投票率は1997年以来の高水準で、投票率が低かった3週間前のEU議会選と比較し、関心の高さをうかがわせた。

フランスの複数の世論調査会社の推定結果で、RNが得票率34%、NFPが29%、アンサンブルは21%となり、7日の第2回投票で巻き返すことは困難とみられ、マクロン中道勢力の敗北が濃厚となった。下院(定数577)の最終議席分布は7日に決定する。

マクロン氏は声明で、「第2回投票に向けて、広範で明確な民主共和同盟を結ぶ時が来た」と述べ、左派のNFPにも協力を求めた。仏西部パドカレー県で当選を確実にしたRNを率いるマリーヌ・ルペン氏は「投票率の高さとフランスを駄目にした現政権への意思表明でRNに投票したすべての有権者に感謝する」と述べた。

RNは297の選挙区でリードしており、来週の選挙で単独過半数に手が届くところにいる。そうなれば、RNのバルデラ党首が首相に選出され、マクロン大統領との保革共存(コアビタシオン)となる可能性が出てくる。2027年の次期大統領選挙でルペン氏が大統領に選ばれる可能性も高まる。

一方、左派急進派「不屈のフランス(LFI)」のメランション党首は、「一つ確かなのは、アタル氏はもう首相ではいられないだろうということだ」と述べた上で、「RNにこれ以上票を与えるべきではないという点では、アタル氏と同じ考えだ」と述べた。

同氏はNFPを構成する左派政党の中でも一番の急進左派だ。NFPはEU議会選で右派が躍進したのを受け、さまざまな左派勢力を結集させて結成された。左派の結集はマクロン氏にとって想定外であり、今では選挙結果を大きく左右する存在だ。

マクロン陣営では、選挙戦の候補者のポスターから不人気のマクロン氏の写真を排除する動きが出た。これは、解散総選挙の誤算の一つだ。マクロン政権第1期の18年には、黄色いベスト運動が起きた。マクロン氏の強引な改革に反発する左派勢力による抗議運動で、1年以上続いた。

2期続くマクロン政権は、任期中に労働法改正、国鉄改革、今年は年金改革を断行した。マクロン政権は議会審議を省略して法案を成立させる憲法49条3項を乱発し、民意を代弁する議会の無視が目立った。金融エリート出身のマクロン氏のトップダウン手法は政治にはなじまず、国民に不快感を与えた。

メディアからは自信過剰と批判され、現時点でマクロン氏のリスクの高い解散総選挙の選択を評価するメディアは見当たらない。第1回投票の結果はマクロン氏の誤算を証明した。結果的にアンサンブルが与党でいられなくなった場合、アタル首相を含む全閣僚は失職する可能性が高く、7月26日から始まるパリ五輪・パラリンピック大会は新閣僚が関与することになる。

7日の決選投票では、RNとNFPの2政党の戦い、あるいは中道が加わった三つどもえの戦いとなる。すでにRNに対抗するため地方レベルで対抗馬の絞り込みのため、候補者の撤退が検討されている。

中道右派勢力も左派勢力も、団結してRNが議会で最大議席を獲得することを阻止するため、あらゆる手段を講じるとしているが、RNは想像以上に支持基盤が盤石との見方もある。理由の一つは移民の急増だ。約6割の国民が「移民が多過ぎる」と答え、治安が悪化している現状を解決できるのはRNだけとみる有権者が多い。

有権者の最大の関心事である購買力向上でも、RNは生活必需品やエネルギーの付加価値税引き下げ、年金支給年齢を64歳から62歳に戻すなど庶民に寄り添った政策を打ち出している。同時に過去に主張していたEU離脱を取り下げ、今はEUへの影響力を高めるといった現実的な政策を掲げ、支持を拡大している。

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