ウクライナに危険な露新国防相 長期戦に耐える経済通を抜擢―欧州メディア

ロシアのベロウソフ氏=2022年11月、 バンコク(AFP時事)
通算5期目の任期に入ったロシアのプーチン大統領が行う新たな組閣で注目されたのは、ショイグ国防相退任と後任に経済学者のベロウソフ第1副首相を抜擢(ばってき)したことだ。スーツ姿の経済通の国防相を登用したことは、ウクライナ軍事侵攻が長期戦になると決意したプーチン氏の采配であると欧州メディアは警戒感を示している。(ウィーン小川 敏)

ベロウソフ新国防相(65歳)は経済学者だ。ソビエト時代にモスクワ大学で経済学を学び、科学アカデミーを経て2000年以来、政権の経済スタッフとしてプーチン氏に仕えてきた。20年1月から第1副首相を務めていた。

ウクライナ侵攻により欧米など国際社会から厳しい経済制裁を受けているにもかかわらず、昨年、ロシア経済がプラス成長を実現した背後には、ベロウソフ氏の貢献があったことは間違いないだろう。旧ソ連・東欧諸国の経済統計分析で有名な「ウィーン国際比較経済研究所」(WIIW)によると、23年のロシアの経済成長率は推定3・5%とプラス成長だった。

ベロウソフ氏はショイグ氏と同様、軍事キャリアを有していない。13日放送の独民間ニュース専門局ntvでゲンガー記者は、ショイグ前国防相とベロウソフ新国防相との違いは前者が軍服を好み、後者は地味なスーツを好む点だと指摘した。そのベロウソフ氏がウクライナにとって危険になる可能性があるという声が欧州メディアで聞かれる。

なぜかというと、経済学者の新国防相は膨大な軍事支出をより効率的にすることを主要任務としているからだ。戦時経済体制のロシアの膨大な軍事費を効果的にすることでウクライナとの長期戦を耐え、戦いに勝利していくというプーチン氏の計算があるからだ。プーチン氏は勝利するまで戦争をやめる考えがないことが、今回の人事で明らかになったわけだ。

ntvで、インスブルック大学の政治学者、ロシア専門家のマンゴット教授は「ベロウソフ新国防相は軍事予算の効率的運用を担当し、戦場での戦略、作戦はゲラシモフ参謀総長が担当するだろう」と予想している。ベロウソフ氏はロシアの軍事産業を強化し、ウクライナに圧力をかけ続ける意向とみられる。軍服よりスーツ姿を好む新国防相べロウソフ氏は、ゼレンスキー大統領とウクライナ軍にとって危険な人物といえるだろう。

一方、ショイグ氏の国防相の解任のうわさはこれまでもささやかれてきた。マンゴット教授は、ntvで「ショイグ国防相の解任はサプライズではない」と語り、「プーチン氏は軍があまりにも強力過ぎると考え、ショイグ氏の権限を制限しようとしている」との見解を示した。

ショイグ前国防相の側近の一人で副国防相だったイワノフ氏が4月、収賄容疑で拘束されている。ショイグ氏解任が“サプライズ”とされた理由は、昨年末からの攻勢で、ロシア軍がウクライナ東部のかなりの領域を占領した矢先であり、戦時中に国防相を解任することは通常ないからだ。

むしろショイグ氏がこれまで国防相だったことについてntvのゲンガー記者は、「ウクライナ侵攻中のロシア軍の多くの失敗や腐敗が広く知られているにもかかわらず、ショイグ氏はほぼ不可侵でその地位を維持してきた。それは主に、プーチン氏との親近感によるものだ。2人はショイグ氏の故郷で何度か一緒に休暇を過ごし、釣りをしている」と説明している。

ショイグ氏は、大統領が主導する国家安全保障会議書記に任命された。閣僚より高いポストで昇進したと受け取れる。ただし、ショイグ氏には権限はない。

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