【パリ安倍雅信】ロシアのウクライナ侵攻後もロシア国内で支店営業を続けてきた、オーストリアのライファイゼン銀行など欧州の大手銀行が、2023年にロシア政府に納めた全体の法人税が、侵攻前年の4倍に当たる約8億5700万㌦(約1340億円)に上ったと英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)が報じた。
膨張する納税額がロシアへの経済制裁に逆効果として、ロシアからの撤退を余儀なくされようとしている。
一昨年2月のウクライナ侵攻を受けて欧州は、天然ガスなど化石燃料のロシアからの輸入を停止。また最近では凍結したロシア要人の資産を、対ロシア防衛に用いることを検討するなど、制裁体制を強めている。
一方で、欧州がロシアの一部銀行を世界の銀行決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から締め出す措置を取った結果、ロシア内での欧州系銀行の利用が大きく膨らみ、納税額も膨張した。
欧州中央銀行(ECB)はこれを問題視し、ロシア内の欧州大手行の締め付けに乗り出した。専門家らも、欧州主要行による納税がロシア政府の財政安定に寄与していると指摘する。
だが最大手のライファイゼン銀行はロシア国内の120以上の支店で約1万人を雇用しており、ECBの本格介入がなければ自主的撤退は困難とみられている。
侵攻4カ月後に現地法人をロシア企業に売却したフランスのソシエテ・ジェネラル銀行の例もあるが、今回、FTに名指しされたオーストリアのライファイゼン、イタリアのウニクレディトとインテサ・サンパオロ、オランダのING、ドイツのコメルツ銀行とドイツ銀行、ハンガリーのOTPの計7行は、実質的にロシア経済を支え続けてきた。