仏、五輪控え警戒レベル最高位 国内外からテロの脅威

スタッフ登録から危険人物除外

パリのシャンゼリゼ通りで革命記念日のパレードの警備に当たる治安部隊=2023年7月14日(UPI)
パリのシャンゼリゼ通りで革命記念日のパレードの警備に当たる治安部隊=2023年7月14日(UPI)

フランスは先月、ロシア・モスクワ郊外のコンサート会場で起きた銃撃テロを受け、警戒レベルを最高位に引き上げた。さらに7月開催のパリ五輪・パラリンピック大会に向け、志願した警備員、ボランティア、聖火ランナーから800人を危険人物として排除した。(パリ 安倍雅信)

欧州最大のユダヤ社会、アラブ社会を抱えるフランスは五輪を控え、深刻な治安リスクに直面している。

ロシアの銃撃事件で犯行声明を出した過激派組織「イスラム国ホラサン州」(IS-K)が、フランスでも近年、テロ計画を立てていたことが確認されている。フランス政府は3月24日、国内のテロ対策行動計画を最高位の「テロ切迫」に引き上げた。

内務省は、テロ対策要員として現在配置されている3000人に加え、4000人の兵士を追加配備した。アタル首相は「イスラム主義テロの脅威は現実」との認識を示した。4月1日の復活祭に懸念されたテロは発生しなかったものの、2017年以来、今年の2件を含む45件のテロ攻撃を阻止したことを明らかにした。

仏テロ分析センター(CAT)のケビン・ジャクソン研究部長によると「(IS-Kは)戦略およびイデオロギーの違いを背景に、タリバン内で反体制運動の推進力のもと、15年に創設された」としている。戦略研究財団研究員のキャロル・アンドレ・デソルヌ氏は「IS-Kの目標はアフガニスタンで権力を掌握することではなく、この国を後方基地にして、フランスなど他国への攻撃を拡大することだ」と指摘している。

主に中央アジア出身者が多く、「ほとんどがアフガン人、パキスタン人、タジク人、ウズベク人」とジャクソン氏は指摘している。ここ数カ月間、IS-Kが準備した攻撃は、欧州各国で阻止されている。23年7月、中央アジア出身の7人がドイツで、2人がオランダで逮捕された。

IS-Kのようなグループにとってのもう一つの選択肢は「ストラスブールのような既に欧州に拠点を置く個人やグループの活動家に遠隔から影響を与えて行動を起こさせる遠隔操作型攻撃の可能性だ」とジャクソン氏は分析している。この場合はテロ被害は甚大だが、テロ計画は察知されやすい。

ダルマナン内相は3月31日、パリ五輪のボランティアスタッフや聖火ランナーをチェックした結果、「Sファイル(危険監視対象リスト)の15人を含む800人」を除外したことを明らかにした。つまり、聖火ランナーや五輪でボランティアになろうと登録した人々の中には「明らかに善意なき人々がいた」(ダルマナン氏)。

一方、これらのチェックにより、フランスで働く約20万人のセキュリティーエージェント(警備スタッフ)の中からSファイルに登録された102人が特定されたことを明らかにした。「実施すべき検査は100万件あり、これまでに18万件を終えた」とし、除外された人物の中にはイスラム過激派や過激な環境活動家がいたとしている。

内務省によると、治安部隊は五輪を前に選手や主要インフラの近くに住む住民を含め最大100万人の調査を行っている。7月26日の開幕に先立って、五輪では1万500人、パラリンピックでは4400人の選手が身元調査の対象となり、コーチや医療スタッフ、そして公認ジャーナリスト2万6000人も同様にチェックを受けることになる。

フランスは過去10年間、ISなどイスラム過激派の標的となっている。昨年10月にはイスラム聖戦主義者とみられる人物が仏北部アラスの学校に乱入して教師を刺殺した。今年は小中高校に脅迫メールが送られている。ダルマナン氏は「フランスはパリ五輪・パラ大会に近づくすべての人をチェックしていることを知るべきだ」と述べている。

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