「反戦候補」存在感薄れ 出来レースの露大統領選 中央選管が立候補認めず

メディアの関心は米元司会者訪露に

ロ シ ア の プ ー チ ン 大 統 領 ( 左 ) と 米 F O X テ レ ビ 看 板 司 会 者 だ っ た タ ッ カ ー ・ カ ー ル ソ ン 氏 ( A F P 時 事 )

3月15日から17日に行われるロシア大統領選で、ロシア中央選挙管理委員会は8日、ウクライナへの軍事侵攻を批判するボリス・ナジェジディン元下院議員の立候補を認めない決定を下した。ナジェジディン氏はこれを不服として提訴したが、ロシアのメディアはプーチン大統領と米FOXニュース元司会者タッカー・カールソン氏のインタビューの報道に染まっており、ナジェジディン氏の声はかき消された形になった。(繁田 善成)

米FOXニュースの元看板司会者、タッカー・カールソン氏がモスクワ入りしたのは2月1日。クレムリンの統制下にあるロシアの主要メディアは3日、これをトップニュースで報じた。

ロシアの主敵はウクライナではなく米国である――。親クレムリンのメディアはそう繰り返し主張してきたのだが、それは都合よく忘れ、カールソン氏のモスクワでの行動を逐一、事細かに報じ出した。

カールソン氏を「世界で最も有名なジャーナリスト」と紹介。マクドナルド撤退後に店舗を引き継ぎ営業する「フクースナ・イ・トーチカ(おいしい。それだけ)」で食事をした、ボリショイ劇場でバレエ「スパルタクス」を見たなど、その報道はまるでスターを追い掛けるかのようだった。

プーチン大統領への単独インタビューが行われたのは6日。これも当然トップニュースだが、その内容に目新しいものはなかった。ウクライナは歴史的にロシアの一地域にすぎない、欧米はロシアとの約束を破り北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を進めた、ウクライナの親欧米政権が同国東部で蜂起したロシア系住民を攻撃し東部紛争が始まった――などである。

カールソン氏は、これらプーチン氏が自らに都合よく解釈した主張に何ら反論しなかった。そればかりか、例えばブチャやマリウポリでのロシア軍による民間人虐殺や、ウクライナの都市への大規模なミサイル攻撃についてなど、ロシアにとって「不都合な質問」は何一つしなかった。

プーチン大統領がカールソン氏に、ウクライナ侵攻後初となる欧米ジャーナリストとの単独インタビューという機会を与えたのは偶然ではない。同氏を通じて米保守層に直接、自らの主張を伝え、さらにそれが世界に拡散されることを狙ったのだ。

ロ シ ア の ナ ジ ェ ジ デ ィ ン 元 下 院 議 員  1 月 31 日 、 モ ス ク ワ ( A F P 時 事 )

一方で、国内向けにも大きな効果があった。メディアがカールソン氏一色に染まったことで、ロシア中央選管が、ウクライナへの軍事侵攻を批判するボリス・ナジェジディン元下院議員の大統領選立候補登録を認めなかったニュースをかき消したのだ。

ナジェジディン氏はかつて、プーチン氏に批判的なボリス・ネムツォフ氏の顧問を務めた。大統領選への立候補を表明する以前は、国営放送の政治トーク番組に定期的に出演していた。リベラル的な発言で知られるナジェジディン氏は、クレムリンのプロパガンダを担う評論家らにしばしば発言を遮られていた。

公然とウクライナ侵攻を批判するナジェジディン氏を、収監中の反体制派指導者ナワリヌイ氏らが支援した。中道右派政党「市民イニシアチブ」が同氏を擁立し、大統領選立候補に必要な10万人分以上の署名を集め、中央選管に提出した。しかし中央選管は、この署名をチェックしたところ15%以上が無効だったとして、立候補登録を受理しない決定を行ったのだ。

中央選管は11日、立候補者登録を締め切った。これにより3月の大統領選にはプーチン大統領と、プーチン政権を支持する「体制内野党」の候補者3人の出馬が確定した。プーチン大統領の5選が決まる「茶番劇」が正式にスタートしたのだ。

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