オーストリア議会選 極右・自由党が躍進か 支持率30%超の勢い

反難民・外国人排斥で躍進

ウィーンで会見するオーストリアのネハンマー 首相=2021年12月6日(AFP時事)

オーストリアにとって今年は選挙の年だ。日程はまだ正式には決定していないが、現政権が任期5年を終える9月か10月には議会選挙(定数183議席)が行われる。極右政党、自由党が30%前後の支持率を集めてトップを走る。6月の欧州議会選挙は議会選の前哨戦と受け取られている。両選挙が同時に実施される可能性もある。欧州の政界はオーストリアの自由党の動向を注視している。(ウィーン・小川 敏)

オーストリア現政権はネハンマー首相が主導する保守派政党、国民党と環境保護政党、緑の党による2党連立だ。選挙の年を迎えて、国民党も、コグラー副首相の緑の党も世論調査では苦戦が予想されている。一方、野党の極右・自由党の第1党への躍進は現時点で確実と受け取られている。

2019年の前回議会選では、国民的人気があったクルツ元首相が党首を務めた国民党の得票率は37・5%。次いで社会民主党21・2%、自由党16・2%、緑の党13・8%、リベラル政党「ネオス」8・1%、共産党0・7%だった。その結果、国民党と緑の党の連立が生まれた。

一方、現在の支持率を見ると、ネハンマー党首の国民党は21%前後、社民党も同程度だ。それに代わって、自由党は30%を超える勢いを見せている。緑の党は10%以下と苦戦する一方、ネオスは11%と2桁台に入ってきた。共産党は3%だ。

自由党が次期議会選で躍進するかどうかは、6月9日に実施される欧州議会選の結果をみれば、より確実な予測ができる。そのため、各政党は欧州議会選に力を入れ始めている。

自由党の躍進の背景には、不法移民への対策強化を訴える反難民、外国人排斥を掲げる「オーストリア・ファースト政策」があることは間違いない。ドイツ、イタリア、オランダ、フランスでも極右政党が躍進する最大の理由はその反移民政策にある。

自由党が第1党になるのは確実視されているとしても、過半数を得ることはできず、連立パートナーが必要となる。だが、現時点ではどの政党も自由党との連立を拒んでいるため、自由党が第1党に躍進してもあまり懸念する必要がないという声も聞かれる。

キックル党首が国民党に呼び掛ければ、自由党・国民党の連立政権の誕生も十分あり得る。政策的に見れば、自由党と国民党は移民政策では似ている。ただし、欧州連合(EU)に対して自由党は懐疑的である一方、国民党は親EU路線だ。ロシアのウクライナ侵攻で国民党は親ウクライナを掲げる一方、自由党はロシア寄りといった違いもある。だから、自由党主導の新政権が発足すれば、オーストリアはハンガリー、スロバキアと共にウクライナ支援に対して消極的なスタンスを取ることが予想される。

社民党はバブラー新党首を迎えて最初の選挙戦となる。バブラー氏は若い頃、マルクス主義者だったことを明言しており、思想的には社民党内でも左派だ。

オーストリアではリベラルな政党は躍進できないといわれてきたが、ネオスが投票率を2桁台に乗せれば、国民党と社民党、それにネオスの3党連立政権というシナリオもあり得る。

興味深い点は、共産党が連邦議会で終戦後初の議席獲得を目指していることだ。有権者の既成政党への不満も手伝って、グラーツ市議会、ザルツブルク州議会選で共産党は大躍進し、市長ポストを獲得した。州議会でも議席を獲得するなど、選挙の台風の目となったが、連邦議会選で議席獲得に必要な5%の得票率を獲得するのは容易ではない。オーストリア国民は冷戦時代、ソ連・東欧の共産党政権がいかに非人道的であったかを目撃してきているだけに、共産党への不信感は根が深い。

EUで唯一の中立国となったオーストリアの議会選の結果は欧州全土に少なからず影響を与えるだろう。欧州の政界ではドイツ、フランス、イタリア、オランダなどで極右系政党が躍進している。自由党が躍進すれば、その流れをさらに後押しすることになる。

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