マクロン仏大統領 アフリカで影響力低下「年金」で成果も外交で成果出せず

退職年金引き上げの改革断行

0 月 12 日 、 エ リ ゼ 宮 ( フ ラ ン ス 大 統 領 府 ) か ら 演 説 す る マ ク ロ ン 大 統 領 = テ レ ビ 映 像 よ り ( A F P 時 事 )

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、年金改革を断行したことが評価され、英有力紙から「今年の政治家」に選ばれた。だが、外交分野では成果を出せておらず、大統領としての手腕に疑問符が投げ掛けられている。特にアフリカにおけるフランスの退潮は、中国とロシアに進出の機会を与える結果を招いている。(パリ・安倍雅信)

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は「2023年の政治家」にマクロン氏を選んだ。理由はフランスで長年難航を極めてきた年金改革を激しい抗議デモにもかかわらず断行したからだ。

欧州内で法定退職年齢が最低の62歳だったフランスに対する風当たりは強かった。国民の平均寿命が年々伸びる中で、マクロン政権は今年初旬、法定退職年齢を62歳から64歳に引き上げる法案を打ち出した。これに対する抗議運動は、1968年に起きた「五月革命」と呼ばれる大規模抗議デモを上回る激しさだった。FT紙は、抗議に屈しなかったマクロン氏を、メルケル前独首相やサッチャー元英首相に匹敵する政治家と評した。

少子化が加速し、公的債務が膨れ上がる中、福祉国家を標榜(ひょうぼう)してきたフランスは、大きな転換期を迎えている。欧州の政治家の多くは、国民に痛みを伴う増税や退職年齢の引き上げ、医療費の負担増を口にする勇気もないと、欧州メディアは指摘している。

一方で、マクロン氏には大きな課題もある。それはフランス外交がうまく機能していないことだ。特にウクライナ危機が始まって以来、プーチン露大統領との特別な対話は停戦につながっていない。また、中国を訪問し、習近平国家主席と会談した際も、「手ぶらで帰国した」と批判を浴びた。

フランスはアフリカで、中露覇権主義の防波堤になってきた。だが、中・西アフリカの旧植民地で次々にクーデターが起きる中で急速に影響力を失い、その隙に中露が存在感を高めている。比較的フランス寄りだった西アフリカの旧植民地ガボンも、今年8月にクーデターが発生し、フランスの影響力は一気に減退した。

ガボンでクーデターを指南したとされるのが中国だ。中国はガボン最大の貿易相手国で、昨年の貿易額は45億5000万㌦に達し、前年比で約50%増加した。中国の対ガボン累積投資額も10億㌦を超え、国有企業大手30社を含む60社がガボンに進出。ただ、中国による「債務の罠」の懸念も指摘されている。

ガボンは他の中・西アフリカの旧仏植民地のようなフランス排斥運動は起きていない。だが、フランスとガボンの関係は近年悪化しており、ガボンは昨年6月、同じフランス語圏のトーゴと共に英連邦に加盟している。

アフリカの旧仏植民地では、2020年にマリでクーデターが発生。21年はギニア、昨年はブルキナファソ、そして今年7月はニジェールで政権が武力によって転覆し、フランスに敵対的な軍政が発足した。この流れがガボンにも飛び火した。

中露両国はアフリカで影響力を急速に拡大させている。ギニア共和国では中国船主によって漁業が支配され、その多くが違法操業に関与している。ママディ・ドゥンブーヤ大統領は、ギニア経済に多額の損失をもたらしていると指摘。ギニア湾はイスラム過激派の海賊行為にも悩まされている。

ロシアは中・西アフリカ諸国の不安定化に乗じる形で、民間軍事会社ワグネルが安全保障のほか、資源開発や物流、金融などにも積極的に入り込んでいる。

これに対し、フランスはマリやニジェールにイスラム過激派掃討作戦のために軍を駐留させていたが、撤退プロセスに入っている。

アフリカでのフランスの急激な地位低下は、国家の威信を守る責任のあるマクロン氏に深刻なダメージを与えている。仏語圏の週刊誌ジュンヌ・アフリックは「アフリカにおけるフランスのかつての威信はほとんど何も残っていない」と痛烈に批判している。

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