同性カップルの祝福、揺れるカトリック教会 教皇の最側近が容認発言

「教理」と現場に相違

バチカン市で日曜恒例の祈りの集会に臨むフランシスコ・ローマ教皇=7月30日(AFP時事)

独ローマ・カトリック教会ミュンヘン・フライジング大司教区のラインハルト・マルクス大司教(枢機卿〈すうききょう〉)はミュンヘナー・メルクーア紙(9月19日付)とのインタビューで、「同性カップルに神の祝福を与えるか」と質問され、「常に具体的な状況に依存するが、神の祝福を求めるならば、それに応じるだろう」と答えた。実際、多くのカトリック教会では既に同性カップルのための祝福の儀式が行われているが、教理上からみて問題がないわけではない。(ウィーン・小川敏)

バチカン教皇庁は2021年、「神の計画に従って明らかにされたものとしては客観的に認識されない」として、同性カップルの祝福は「許可されていない」という立場を明確にした。それでも、マルクス枢機卿のように、同性カップルに神の祝福を与えようとする聖職者が絶えない。「教理」と現場での「実践」の間の相違が次第に広がってきている。

最近、デュッセルドルフ近郊メットマンの教区神父が同性カップルの祝福式を実施し、保守派聖職者で知られるケルン大司教区のライナー・マリア・ウェルキ枢機卿から叱責を受けた。神の祝福を与えるべきだと主張する聖職者らは、「教会的に結婚の秘跡を受けられないカップルがいることを知っている。しかし、彼らがそのために牧会から排除されることはあってはならない」と指摘している。

マルクス枢機卿は19年12月12日付の週刊誌シュテルンのインタビューの中で、「カトリック教会は同性愛者の人々を歓迎する。同性同士が長年互いに誠実にカップルの生活を送っているなら、教会はその生き方に一概に負や無の評価を下してはならない」と述べる一方、「カトリック教会は同性カップルにも『司牧的に寄り添う』ということであって、『結婚の秘跡』を授けるわけではない」と断っている。

同枢機卿の発言は当時、教会内外で大きな波紋を呼び、「私は多方面から批判を受けている。ある人々は『彼はやりすぎだ』と言い、ほかの人々は『彼は不十分だ』と言う」と述べている。忘れてならない点は、マルクス枢機卿はフランシスコ教皇を支える枢機卿顧問評議会メンバーの1人であり、教皇の信頼が厚い高位聖職者だ。同枢機卿の発言はフランシスコ教皇の意向が反映していると受け取って間違いないだろう。

ドイツのカトリック教会は現在、教会刷新活動「シノドスの道」を推進している。「シノドスの道」は教会聖職者の性犯罪の多発を契機に始まったもので、フランシスコ教皇が19年に開始し、世界各教会で積極的に協議されてきた。独司教会議が提示した主要な改革案の一つは同性カップルの祝福の認可だが、バチカン教皇庁は独教会の改革案が行き過ぎと判断し、再考を要求している。

ローマ・カトリック教会は15年10月、3週間にわたって世界代表司教会議(シノドス)を開催したが、フランシスコ教皇はシノドス開催記念ミサで、「神は男と女を創造し、彼らが家庭を築き、永久に愛して生きていくように願われた」と強調した。一方、閉幕の演説の中では、「家庭、婚姻問題では非中央集権的な解決が必要だ。教会は人間に対し人道的、慈愛の心で接するべきだ。教会の教えの真の保護者は教えの文字にこだわるのではなく、その精神を守る人だ。思考ではなく、人間を守る人だ」と指摘し、信者を取り巻く事情に配慮すべきだと述べた。

教皇のシノドスの開会式と閉幕式の発言では、同性愛問題で微妙なニュアンスの違いが浮かび上がってくる。教皇自身が教理主義の保守派聖職者と現場主義の改革派聖職者の間で揺れ動いているのだ。このことは教皇の最側近のマルクス枢機卿にも言えることだ。

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