フランス、特別な支援に批判も  高等教育の移民枠で議論再燃  移民排斥・極右台頭の原因に 

6月30日、パリ郊外ナンテールで、バスの消火 活動を行う消防隊員(EPA時事)

米連邦最高裁が、大学の入学選考で人種的マイノリティーを優遇していた措置を違憲とする判断を下したことを受け、同様の措置を取るフランスで、その是非を問う議論が再燃している。同国に多いアラブ系移民を最高学府が一定枠受け入れることを義務化していることが多様性の確保につながる一方、大革命来の法の下での権利の平等の間で、どうバランスを取るべきかの議論が続いている。(パリ・安倍雅信)

フランスには、特定の社会的グループや個人(移民、女性、障害者など)を積極的に支援し、差別や社会的不利益を受ける人々を支援する「ディクリミナシオン・ポジティフ」という政策が存在する。例えば、国立行政学院(現国立公務学院)にはアラブ系移民枠があり、エリート養成校であるグランゼコールには貧困地区からの特別枠がある。

フランスは、欧州の中で欧州以外の国からの移民がスイスに次いで多い国とされる。

フランスで最も多い旧植民地の北アフリカ・マグレブ諸国出身移民は、1954年に本格化したアルジェリア独立戦争でフランス軍として戦ったアルジェリア人兵士を戦争終結後にフランスが大量に受け入れたことに始まる。

その後もミッテラン左派政権がアラブ系移民を積極的に受け入れたため、人口の1割に達する欧州最大規模の600万人を超えるアラブ系移民社会が形成されている。

パリ西郊外ナンテールで6月27日に交通検問で警官に射殺された17歳の少年はアルジェリア系移民の母を持つ。移民差別と「公権力乱用の殺人容疑」への強い反発から抗議デモは全国に波及し、路線バス、役所の建物まで放火された。暴動参加者の多くは20歳以下の未成年者で、日常の怒りや不満を爆発させたものだった。軽犯罪を繰り返す青少年がもたらす暴動とテロは長年の社会問題だ。

左右の政治信条の別なく時の政府は、憲法評議会の承認を得ながら「出自、人種、宗教」に基づくいかなる差別に関しても、障害者、移民、女性、貧困家庭、性的マイノリティーといった少数派が受ける社会的不利益に対処する措置を進化させてきた。これを支えたのは、同国の伝統的カトリックの弱者救済精神と社会主義的思想だった。

ところが、社会の構成員の分布が変化し、移民出身者が政治家や官僚、企業の管理職にも就くようになった現在、特別な支援で手に入れたポジションにあるマイノリティーの彼らへの目は厳しくなっている。保守系時事週刊誌レクスプレスは、米高裁の判決を受け、差別撤廃措置は「一時的な美徳でしかない」と指摘した。

そもそも近年、次々に出された差別撤廃措置には、非常にリベラルな背景を持つ者が関与していた。2005年、国会は全会一致で恵まれない環境を背景に持つ学生を支援することを全ての大学とグランゼコールに一般化することを可決した。それは同時に富裕層の経済負担につながり、批判もされてきた。レクスプレスはどんな特別な教育優先措置をとっても勉学にまったく無関心な移民系の青少年の方が圧倒的に多いと指摘する。

レクスプレスに6月30日に掲載された「フランスのディクリミナシオン・ポジティフはやめるべきか」の記事で、フランスが女性の政治参画を奨励したことと同様、「少数民族や性的マイノリティーの権利を主張する側とそれに対して異なった考えを持つ側に対して、どちらの側も賢明な取り組みに本当の意味で考えを巡らせていない」と指摘している。

つまり、人種的根拠に基づいて与えられた優先順位や地位という特権から排除された人々が感じる憤りをどう扱うかという問題を正面から論じてこなかったということだ。これがフランス国内で移民排斥の極右勢力の台頭というポピュリズムを生む原因にもなっている。

特にフランスでは、イスラム過激派が分離主義を唱え、価値観の異なるグループの社会的分断の促進を主張しており、歩み寄りや議論を否定することで社会に亀裂をもたらす深刻な問題と受け止められている。そのため、米国の例を見ながら、ディクリミナシオン・ポジティフの再考が求められている。

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