社民党、党首選でドタバタ オーストリア 新党首のもとで復活目指す  次期総選挙で第3党に転落か

社民党の新党首に選出されたアンドレアス・バブラー氏=6月18日、オーストリア国営放送から

オーストリアの社会民主党(旧社会党)は戦後から同国の主要政党として活躍してきたが、欧州の若手保守派代表、セバスティアン・クルツ氏が率いる国民党が台頭した頃から選挙で敗北を続けている。3日、特別党大会で新党首を選出し、新しい指導体制を敷き、次期総選挙で政権奪還を目指す予定だったが、党首選で集計ミスが発覚し、48時間後に新党首が入れ替わるといったドタバタ劇を演じた。(ウィーン・小川 敏)

党首選は608人の党員代表によって行われ、候補者は73人に上った。1カ月余りの選挙期間の後、1位にはブルゲンランド州のハンス・ペーター・ドスコツィル州知事、2位はニューダーエステライヒ州トライスキルへェン市のアンドレアス・バブラー市長、現職党首のパメラ・レンディバーグナー氏は3位に甘んじた。その後、レンディバーグナー氏は政界引退を表明した。

ドスコツィル、バブラー両氏の間で決選投票が実施され、両候補は党代表の前で決意表明の演説をした。本命のドスコツィル氏は声帯の手術をしたこともあって声があまり出ないが、懸命に党の刷新を訴えた。一方、マルクス主義者であると宣言し、欧州連合(EU)を批判していた数年前のビデオがメディアに流れて、党大会直前までその説明に追われていたバブラー市長は社民党が忘れかけていた典型的な左派政策(富裕者税など)を主張すると、会場は盛り上がり、立ち上がって拍手する党員も現れた。

党代表やテレビで演説を聞いていた国民は本命のドスコツィル氏の面白みのない演説に失望する一方、ダークホースと見なされてきたバブラー氏の覇気のある演説に拍手を送った。そして投票が実施された。

発表された結果はドスコツィル氏が53%を獲得し、バブラー氏を破った。多くの党員は少々驚いたが、勝利したドスコツィル氏に拍手を送った。

ドスコツィル氏は5日、新しい党幹部チーム編成など党人事に乗り出すためにウィーン入りすることになっていた。多くの報道関係者が党本部前に待機し、新党首の到来を待っていた。

ところが、その日の早朝、党首選を担当する選挙委員会の代表は驚くべき情報を受け取った。投票集計の際に技術的な間違いが生じ、実際はバブラー氏が勝利していた。

5日午後2時、選挙委員会の代表は記者会見を開いて、党大会の投票結果を修正、「投票結果を集計する際、コンピューターの集計作業でエクセルのミスで間違った候補者に票を入れてしまった」と説明した。

社民党の党首選の行方を追っていた政党関係者からは、「600票余りの集計すら正確にできない政党に国の仕事を任せることができるか」といった皮肉も出てきた。隣国ドイツの大衆紙ビルドは早速、「オーストリアでなければあり得ないような出来事だ」と報じた。

社民党ではここ半年あまり、エネルギー価格の急騰や物価高で国民が苦しんでいる時、党指導部でごたごたが続き、野党第1党として責任ある政治活動に専念できない状況が続いてきた。党首選の集計ミスはその頂点だった。

オーストリアでは早ければ今年秋にも総選挙が実施される可能性がある。複数の世論調査によると、極右政党「自由党」が第1党、ネハンマー首相の保守政党「国民党」がこれを追っている。社民党は第3党に落ちることはほぼ間違いないと予想されている。

バブラー新党首は新しい指導体制を立て、党の再建に乗り出す。連邦政治での経験はなく、マルクス主義者と自称していた昔の動画がメディアに流れるなど、スタートラインから厳しい試練に遭遇している。

選挙は水物といわれる。どのような変化が起きるかは誰も予測できない。ただ、バブラー氏が名門社民党の看板を復活させると信じる国民は多くない。

spot_img
Google Translate »