コロナ禍で出生率低下危機 欧州、家族政策リセットの年

モンペリエの凱旋門上でバレンタインを祝うカップル=フランス開発機構HPから

出生率低下が顕著な欧州各国は、新型コロナウイルスの悪影響の検証を始めている。フランスは今でも欧州では少子化対策の優等生だが、出生率低下に歯止めをかけられていない。ただ、欧州では依然、国家を構成する最低単位を家族に置いており、欧州も家族政策の原則から対策をリセットする年となりそうだ。(パリ・安倍雅信)

フランスでは、国立統計経済研究所(INSEE)によると、2021年2月時点では毎日1860人の子供が生まれ、前年同期より5%減少した。減少幅は少しずつ少なくなっているが、14年以降の出生率の構造的な減少の一部と考えられている。その理由の一つは出産可能な女性の数が減少に転じていることも挙げられる。

フランスは21年に74万2500人の子供が生まれ、前年より7300人多く、コロナ禍前の19年より1万900人少なかった。女性1人が一生に産む特殊出生率は、コロナ禍が直撃した20年に1・8人だったのが、21年には1・83人に微増した。出生率は依然、欧州連合(EU)域内でトップだが、基本減少傾向にある。

毎年の人口動態を調査している仏人口統計学研究所(INED)によれば、22年1月1日時点で、フランスの総人口は6780万人で、前年より18万7000人増加した。だが、コロナ禍を除く14年以降毎年の出生率低下についてはコロナ危機前に戻っておらず、継続的減少の始まりとの見方が強い。

経済との関係を指摘する専門家は、出生率低下を示すものとして乳幼児に関連する商品やサービスは、コロナ禍前の19年を15年と比較して、赤ちゃん向けの非食品製品の売上高が25%、おむつの売上高が17%減少していたと指摘した。フランスでは今後5年間でベビーブーマー世代の死亡率が高まるため、人口減少は加速する可能性がある。

10年、フランスの出生率は2・03人に達し、EU域内だけでなく日本をはじめ少子化に苦しむ世界の国々が注目した。結果的に子育て家族からのフィードバックによる改善を重視したきめ細かい家族支援政策が貢献し、事実婚など結婚形態の多様化を国が平等に受け入れたこと、移民1世が出生率を押し上げていたことなどが指摘された。

大学までの授業料無料化や低額化などで貧富の差に関係なく、高等教育を受ける機会を与えているのはフランスだけではない。少子化に苦しむドイツや英国、イタリア、スペインも同じだ。返却不要の奨学金制度も整備されているが、少子化対策には効果を生んでいない。世代間の相互扶助で成り立つ欧州福祉国家の人口減少は国家の存立に影響する。

欧州諸国は、20世紀の二つの大戦で多くの犠牲者を出した経験から、人が人間らしく生まれ、人間らしく生き、人間らしく死ぬことを保障する福祉国家建設に戦後はしのぎを削ってきた。それは保守的な弱者救済のキリスト教精神とリベラルな社会民主主義的思想の両方で合意があった。

欧州内では家族を国家の最低単位と規定する国がほとんどで、フランスは人口維持に重点を置いた家族政策があり、ドイツの家族条項に定められた家族の基本権は、保育サービスなどの「社会インフラ政策」、家族で過ごす時間の確保の「時間政策」などの社会政策の法的根拠として大きな影響を与えている。近年は対象を単親親に拡大している。

英国では、ブレア労働党政権時代から保守党にも受け継がれる「国民はコミュニティーや家族といった生活の場において、平等・社会的公正・連帯・共同・弱者保護といった民主主義的価値基準を実行可能な政策手段とする」との考えが受け継がれている。いずれにせよ少子化対策は国家の基本に関わる事項との認識がうかがえる。

最近、日本でも注目されているハンガリーの家族政策は、根底に家族主義を支える伝統的キリスト教精神と人口流出阻止がある。政府は18年以降、新家族政策に本腰を入れ、目玉は18歳から40歳の既婚女性に対して1000万フォリント(約360万円)を20年ローン、無利子で政府が融資し、子供を3人産めばローン残高は返済免除となる。

世界経済フォーラムの18年リポートで、先進国で少子化先進国となった日本に「賢明な政策は労働市場での差別、限られた育児休暇、不十分な育児施設など、出生率を不必要に低下させる障壁を特定し、取り除く必要がある」と指摘した。

ただ、それらの障壁を取り除いても、家庭観や国家にとっての家族の存在意義を明確にする重要性も議論し、法的枠組みをつくらなければ、いつまで経(た)っても優先順位が低いままになりかねない。

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