【パリ安倍雅信】ドイツのショルツ首相は5日、独製歩兵戦闘車「マルダー」をウクライナに供与する意向を明らかにした。ドイツは外国に長年、重火器提供を行っていなかったが、フランスがフランス製「軽戦車」を供与することを表明、欧州連合(EU)として破壊力の大きな兵器支援を行わないハードルがなくなったことで、ショルツ首相もウクライナ軍の訓練も含め、歩兵戦闘車供与を決めた。同首相はバイデン米大統領との電話会談後の共同声明に供与を盛り込んだ。
これまで北大西洋条約機構(NATO)およびEUは、ロシアからの過度の反発を回避するため飛行距離の長いミサイル兵器や戦車供与に慎重だった。侵攻長期化の中、米仏が装甲車や歩兵戦闘車をウクライナに供与する方針を示したことから、ドイツも同様な強力兵器の供与に踏み切った形だ。独メディアは、提供する歩兵戦闘車は最大40台になるとし、早ければ3月末までに最初の供与が始まる予定だ。
欧州製であるフランス製戦車が提供されるのはウクライナ紛争始まって以来初めてで、ドイツもフランスに続いた形だ。米国も歩兵戦闘車ブラッドレーの供給を決めた。さらにロシアの大規模なミサイル攻撃に対して防空強化が課題とされ、ドイツ政府は地対空ミサイルシステム「パトリオット」も提供する方針だ。
ウクライナ側は、昨年2月にロシア軍侵攻以来、米欧に対して大型近代戦車の提供を要求し続けてきた。米仏独は今回、小型戦車の供与に踏み切ったが、ウクライナの地上戦に強力な兵器を提供する方向に舵(かじ)を切ったことになる。ドイツ国内からは緑の党など日ごろは反戦を訴えてきた政党も与党の連立政府に参加し、重火器支援にも強い反対派は少ない。