中国発のコロナ再拡散を警戒 伊がEUに規制措置要求

発熱患者を受け入れている中国の病院。非発熱者と同じ入口で対応していた=昨年12月12日、北京(時事)

中国が「ゼロコロナ」政策を撤回し、春節(旧正月、1月21~27日)を控え、海外で過ごす中国国民が増えることが予想されている。欧州で「新型コロナウイルスは収束した」という声がウイルス学者の間から出てきた矢先、感染者が急増し、死者も増えている中国から旅行者が飛んで来るとのニュースを受け、欧州諸国は戸惑っている。

最近、ドイツの著名なウイルス学者クリスティアン・ドロステン教授(シャリテ・ベルリン医科大学ウイルス研究所所長)は「コロナ・パンデミックは終わり、通常の風土病となる」と語った。その欧州へ感染爆発中の中国から観光客が来るのは3年前の春節と状況は似ているのだ。

欧州は2020年上旬、中国共産党政権がウイルス感染の初期データを公表せず、ウイルスの発生源問題も隠蔽(いんぺい)、その結果、コロナ・パンデミックの最初の被害地域となった。欧州でも最初の犠牲地はイタリア北部ロンバルディア地域、特に、小都市ベルガモだった。火葬場には霊柩(れいきゅう)車が列をつくる。軍トラックが出動して遺体を輸送する。市官製メディアは死者名リストでいっぱいとなった。

イタリアのメロー二首相(AFP時事)

今回、伊政府の反応は“それ故に”早かった。メローニ政権は中国からの渡航者に対し、抗原検査の陰性証明書の提示義務を決定するとともに、欧州連合(EU)に対し「共通の規制措置を取るべきだ」と要求した。フランス、スぺイン、米国、カナダなどが昨年末、中国からの旅行者にコロナウイルス検査を義務付ける予防措置を導入したばかりだ。

また、北アフリカのモロッコの外務省は昨年末、中国からの渡航者の入国を1月3日から禁止すると発表した。

今年1月1日からEU理事会議長国になったスウェーデン政府は、「4日に統合政治危機対応(IPCR)メカニズムの会議を招集する」と発表。同政府によると「中国からの感染拡散を防ぐために欧州レベルで入国制限の可能性を視野に入れた統一戦略を検討する」という。

中国からの渡航者への予防措置ではEU27カ国にはまだコンセンサスがない。ドイツやオーストリアは特定の国からの渡航者への規制強化には消極的だ。

ドイツの場合、社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の3党から構成されたショルツ連立政権内では発足当初からコロナ対策にコンセンサスがない。幸い、ワクチン接種が広がりコロナ規制は段階的に撤去されてきた。FDPでは「コロナ規制の完全な撤回」を要求する声が高まっている一方、SPDのラウターバッハ保険相は「現時点でコロナ規制の完全撤回は軽率だ」と消極的だ。

隣国オーストリアは観光国だ。旅行者が落とす外貨収入は重要だから、中国人旅行者に対する検査義務には観光業界、ホテル業界からも強い抵抗がある。

中国からの渡航者への検査義務などで共通の予防措置が取れない背景には、中国当局からの新規感染に関連するデータが入手できないことがある。最悪のシナリオは、感染力があって致死力のある新しい変異株の登場だ。

世界保健機関(WHO)は12月30日、中国当局にコロナ感染に関するリアルタイムかつ具体的な情報を定期的に共有するよう再要請した。WHOは中国当局に、入院、死亡、ワクチン接種に関するデータに加え、遺伝子配列データもさらに提供するよう求めている。(ウィーン・小川 敏)

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