中国海運大手 ハンブルク港の株式取得

ドイツ・ショルツ政権が承認

ドイツのショルツ首相(UPI)
ドイツのショルツ首相(UPI)

憂慮される融和路線の継承

ドイツのショルツ連立政権は10月26日、同国最大の湾、ハンブルク湾港に四つあるターミナルの一つの株式を中国国有海運大手「中国遠洋運輸集団(コスコ・グループ)」が取得することを承認する閣議決定を行った。この決定に対し、「欧州の経済安全保障への脅威だ」との警戒論がショルツ政権内だけでなく欧州連合(EU)内でも高まっている。(ウィーン・小川 敏)

世界最大の港湾運営会社であり海運会社のコスコ・グループは2021年9月、 ドイツのハンブルク湾のハンバーガー・コンテナ・ターミナル・トレロート (CTT)の株式の35%を取得した。そのことが伝わると、「中国共産党の管理下にある国営企業がドイツ有数の港湾のコンテナターミナルを買収すれば、ドイツの安全を損なう危険が出てくる」といった懸念の声が上がった。

ハンブルク湾のターミナル会社とコスコの商談については、複数の省庁が反対。具体的には、経済、内務、国防、運輸、財務の各省庁と外務省の6省だ。一方、連立政権内ではショルツ首相の社会民主党(SPD)が賛成、反対は環境政党「緑の党」とリベラル派政党「自由民主党」(FDP)の2党だ。

ショルツ首相は2011年~18年にハンブルク市長を務めた。商談はショルツ市長時代から始まっていたこともあり、ぜひとも成立させたいとの意向が強い。首相は「最小のコンテナターミナルの少数株であり、国益のリスクとなることはない」と、懸念を払拭するために腐心してきた。

連邦政府が商談を拒否しない限り、10月に自動的に発効する。そこでショルツ首相は閣議決定を下して、ゴーサインを出したわけだ。ショルツ首相は連立パートナーを説得するために、取得株式を35%から25%未満に縮小し、人事権などを中国企業に渡さないという条件を提示し、ハベック経済相(兼副首相)やリンドナー財務相らの承認を勝ち得た。

この結果、ショルツ首相は11月初めに中国を訪問し、中国共産党第20回党大会で3期目の任期を実現したばかりの習近平国家主席と会談する最初の首脳となる予定だ。

コスコは近年、欧州の多くの港に関心を寄せてきた。同社はピレウス (ギリシャ)、ゼーブルッヘ (オランダ)、ロッテルダム (オランダ)、アントワープ (ベルギー)、バレンシア (スペイン)など戦略的、経済的に重要な欧州の港の株式を保有している。

300万TEU(20フィートで換算したコンテナ個数を表す単位)の輸送能力を持つコスコとその子会社は欧州の14の港に既に関与しており、ハンブルクはロッテルダムからビルバオ、イタリアのヴァドに至る一連のネットワーク構築の最後の投資先だ。

ドイツの中国研究機関MERICSは、「コスコ社の拡大は北京の利益に沿ったものであり、国家によって資金提供されている。海洋貿易ネットワークの開発は、一帯一路構想に関する中国の計画の中心的な柱だ」と指摘している。

EUでは、中国が欧州の海上貿易を支配し、安全保障上のリスクになることへの懸念が強い。欧州委員会はハンブルク市と中国企業との取引に最初から反対してきた経緯がある。

ハベック経済相は、「重要なインフラに影響を与える機会を中国に与えるべきではない」と警告し、「過ちを繰り返してはならない」と過度の中国依存に強い警戒を示している。同じ連立与党FDPのブッシュマン法相は20日、「ドイツのいかなる重要インフラも中国政府の管理下に置かれるべきではない。それは独立の問題だ」と主張した。

一方、野党第1党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)議会グループのシュパーン副議長は、「パンデミックとエネルギー危機から学んだ教訓の一つは、中国からもっと独立しなければならないということだ」と述べ、コスコの参入に反対している。

ハンブルク港は取扱量が欧州第3位の重要港で、コスコが参入するのは四つあるターミナルの一つ。ハンブルグで取り扱われるコンテナのほぼ3分の1が中国製または中国市場向けであり、年間約120万個のコンテナが集まる。

メルケル政権下の16年間、ドイツは中国と経済関係を拡大する一方、中国の人権問題などについては深入りしなかった。その間、中国は欧州市場に積極的に進出した。ショルツ首相がメルケル前首相の対中国融和路線を継承しないことが願われる。

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