【パリ安倍雅信】フランスのマクロン大統領は26日、西アフリカの4カ国訪問を開始した。目的はアフリカへの影響力を増すロシアに対抗して、西アフリカ諸国への食料と安全保障の分野での協力と支援を約束するためだ。一方、ロシアのラブロフ外相は24日からエジプトを皮切りにコンゴ共和国やウガンダへの訪問を開始し、ウクライナからの小麦粉の輸送が滞っているのは欧州のせいだと説明して回っている。
アフリカに影響力を持つフランスのマクロン氏は、カメルーン、ベナン、ギニアビサウへの4日間の訪問を開始した。カメルーンを訪問したマクロン氏は、アフリカの食料危機について欧州の対ロシア制裁が原因とのロシアの主張に対して「完全な誤りだ」と述べ、「食料は、エネルギーのように、ロシアの戦争の道具になっている」と指摘し、アフリカ大陸の食料自給を支援する」と表明した。
ロシアの穀物とエネルギー、ウクライナの穀物、さらに欧州との貿易関係の恩恵を受けるアフリカ諸国は、今年3月の対ロシア制裁の国連決議でアルジェリア、コンゴ、マリ、モザンビーク、セネガル、南アフリカ、スーダン、ウガンダ、ジンバブエなど17カ国が棄権した。
マクロン氏は今回、「平和と安全なくして経済発展はあり得ない」と述べ、フランスが食料安全保障とテロとの戦いの分野で支援を提供するとカメルーンで述べた。さらに「フランスはアフリカのパートナー国を支援し、その要請に応じて大陸の安全保障に断固としてコミットし続ける」と付け加えた。カメルーンでは地方分権の対立が続き、17年には内戦で6000人以上が命を落としている。
旧植民地マリで仏軍が主導する欧州部隊がイスラム過激派テロリストの掃討作戦に関与していたが、2月に撤退を決めた。理由はフランスとマリ軍事政権との外交関係が悪化している上、仏軍兵士の犠牲が相次いだためだ。一方、ロシアの民兵組織ワグナーが仏軍と置き換わって影響力を与えている。中央アフリカ共和国も同様な状況にある。
マクロン氏のアフリカ歴訪で、ウクライナへのロシア侵攻をアフリカ諸国が「一方的な侵略」と認めていない考えを変更させ「戦争を始めたのはロシアだ」と明確にしたいとしている。
アフリカの深刻な旱魃(かんばつ)に加え、熱波に襲われる欧州連合(EU)諸国も食料生産がダメージを受けている。欧州委員会の報告では、前例のない熱波の不作をウクライナ産農産物で補えるはずが、戦争による輸送ルートの遮断で全ての可能性を打ち消すと警告している。マクロン氏はウクライナ産小麦粉に大きく依存するアフリカへの協力と肥料などの生産能力の向上支援を歴訪先で表明する方針だ。