EUのロシア産化石燃料依存脱却 経済萎縮懸念で足並みそろわず

エネルギー政策の構築急務

ドイツのエネルギー大手ユニパーに対する公的支援に関して記者会見するショルツ首相=22日、ベルリン(EPA時事)

ウクライナ危機の終わりが見えない中、ロシア産化石燃料依存を脱却したい欧州連合(EU)は、加盟国間の足並みがそろわず、経済と制裁効果の狭間(はざま)で葛藤している。節電を呼び掛けるEUだが、経済活動に致命傷を与えるエネルギー不足を恐れる今、トータルなエネルギー政策の構築が急がれている。(パリ・安倍雅信)

天然ガスの5割以上をロシアに頼ってきたドイツのショルツ首相は今月22日、ロシアから供給される天然ガスが60%に削減され、経営難に直面する独エネルギー大手ユニパーへの支援を表明した。具体的にはユニパーの30%の株式を政府が取得して、経営を立て直し、ガスの安定供給を目指す。

ロシア国営ガスプロムは6月中旬以降、ガス供給量を60%減らし、ユニパーは不足分を割高なガス市場から調達しているため、1日当たり数千万ユーロの債務超過に陥っている。同社救済のため10月から価格上昇分を消費者が負担し、4人家族で年平均200~300ユーロ値上げになると説明し、同時に政府が消費者負担の軽減に取り組むと約束したことを明らかにした。

今年中の原発ゼロ政策にこだわるドイツは、ガス削減分を一時的に石炭で補おうとしている。だが、政府与党内で連立を組む自由民主党(FDP)が「非常事態にイデオロギーにこだわっている場合ではない」と強く批判し、石炭より温室効果ガスの排出量が少ない原発停止の延期を主張している。

一方、フランスのマクロン大統領は今年2月、EUが掲げる2050年までの脱炭素目標を達成するため、最大60%の低炭素電力(原子力)の増産と、再生可能エネルギーの2本立てで電力の供給力を増やす方針を表明。国内で改良型の欧州加圧水型炉(EPR2)を新たに6基建設するほか、さらに8基の建設に向けて調査を開始すると発表した。

フランスの原発依存度は7割と高く、仏政府は今月、原発開発を政府主導で行うため、フランス電力(EDF)の完全再国有化の方針を表明。現在の株保有84%を100%にする。フランスはドイツやイタリアに比べ、ロシア産ガスへの依存度は17%と低いため、原発と代替エネルギーでガス減少分は補えるという考えだ。

欧州議会は今月6日、水素発電(LHG)や原子力発電を気候変動の抑制に寄与する投資対象とするEUの規則案を支持し、法制化へ一歩を踏み出した。欧州委員会が策定した規則案は、気候変動の抑制に寄与する投資対象「EUタクソノミー」に23年から天然ガス発電や原子力発電を加え、それらへの投資をグリーンと認定する方針だ。

気候変動問題への取り組みが待ったなしの状況の中、欧州委員会はロシアの化石燃料への依存を解消することも急務。ロシアは現在、EUが使う天然ガスの40%(ドイツ供給削減前)、輸入原油の27%を供給している。EUはロシアに年間約4000億ユーロを支払い、結果的にロシアの軍備増強につながっているとの認識だ。

EUはロシア産化石燃料からの脱却「リパワーEU」を宣言したものの、代替エネルギー供給策は未整備のままだ。

欧州委員会は18日、カスピ海に面した天然ガス油田を持つアゼルバイジャンと天然ガス供給量の拡大で合意した。EUは現在、アゼルバイジャンからトルコを通り、イタリアに至る南ガス回廊のパイプラインから年間80億立方メートル以上の天然ガスを輸入している。今回の合意は2027年までに、輸入量を現在の2倍以上にするというものだ。

EUは、加盟国間でエネルギー事情が異なり、産業政策を含め経済を直撃するエネルギー政策で「リパワーEU」の足並みの乱れは顕著だ。そこで問題になっているのが、域外から輸入したエネルギーだけでなく、域内で生産されたエネルギー源を加盟各国で振り分けるシステムが存在しないことだ。

フォンデアライエン氏は「現時点でEUはトータルなエネルギー政策を決める権限は与えられていない」と述べている。ただ、EUの国民生活と産業を守るためには、エネルギーの再分配について議論を深める時がきているとも言えそうだ。今年の冬を越えるためEUとしては徹底した節電を呼び掛けている。

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