【パリ安倍雅信】イタリアのドラギ首相は21日、マッタレッラ大統領に辞表を提出した。ドラギ氏は左右の幅広い政党から成る挙国一致政権を率いていたが、連立与党の主要政党から事実上の不信任を突き付けられたためだ。
20日の上院(定数321)での内閣信任投票は、賛成95、反対38で信任された。だが、先週の信任投票を棄権した連立与党の左派「五つ星運動」に加え、右派「同盟」とベルルスコーニ元首相が率いる中道右派「フォルツァ・イタリア(FI)」も投票を拒否したことで、政権は事実上、崩壊した。
議会では先週14日にも五つ星運動が信任投票を拒否し、ドラギ氏は辞意を表明。マッタレッラ大統領は辞任を拒否し、ドラギ氏は今回の信任投票に臨んだが、連立政党の離脱が止まらなかった。
ドラギ氏は幅広い政党をまとめた連立政権を発足させることで政治危機を救ったが、1年半足らずで退陣することになった。マッタレッラ氏もドラギ政権が議会の過半数の支持を得られなくなった以上、辞任を受け入れざるを得ない。
イタリア憲法の規定では、議会の解散から70日以内に総選挙を行う必要がある。来年春の議会任期満了を待たず、9~10月に総選挙が前倒しされる可能性が高い。イタリアで年の後半に総選挙が行われるのは第2次世界大戦後では初めて。
最新の世論調査では、主要政党でドラギ政権に参加していない右派「イタリアの同胞」が支持率20%台前半でリードし、ドラギ政権を支えた中道左派の民主党が僅差で追っている。
同盟とFI、イタリアの同胞など右派が統一会派を結成させられれば、議会の過半数確保が視野に入ると見られる。ドラギ氏を支えてきた民主党と五つ星運動の間には亀裂が生じており、欧州連合(EU)に懐疑的な右派ポピュリスト勢力による連立政権が誕生する可能性が高い。
次期首相の最有力候補と目されるのは、イタリアの同胞の女性党首メローニ氏。同氏はベルルスコーニ政権でイタリア史上最年少の閣僚(青年相)に就いた経歴を持つ。イタリアの同胞は、第2次世界大戦時のファシスト指導者ムッソリーニの側近や支持者が結成したイタリア社会運動の流れをくむ。