EU拡大に強い意志 露のウクライナ侵攻 23日からEU首脳会議

新たな安全保障の枠組み構築

11日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)で記者会見する欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長(左)とゼレンスキー大統領(EPA時事)

ロシアのウクライナ軍事侵攻が長期化する中、欧州は東西冷戦後の安全保障体制の見直しを迫られている。ウクライナの欧州連合(EU)加盟、NATOの欧州戦略見直し、エネルギーや食の安全保障の大幅な路線変更の検討に入った欧州は、自由主義陣営の立て直しに本腰を入れている。(パリ・安倍雅信)

EUは6月23~24日に欧州理事会(EU首脳会議)を開催する。これに続き北大西洋条約機構(NATO)は29~30日の日程で首脳会議を開催予定で、メンバー国ではない日本やオーストラリアの首脳も出席予定だ。

欧州は今、この二つの重要な首脳会議に向け、特にウクライナで起きているロシア侵攻に伴う戦争に対して動きを活発化させている。EUの執行機関・欧州委員会のフォンデアライエン委員長は11日にウクライナの首都キーウを電撃訪問し、続いて16日には仏独伊ルーマニアの4カ国首脳がキーウで同国のゼレンスキー大統領と会談した。

ゼレンスキー氏との会談後の共同記者会見でマクロン仏大統領は、EUの4カ国がウクライナの「即時」加盟候補国入りを支持すると言明。ショルツ独首相は「ウクライナは欧州の家族の一員だ」と述べ、同国への武器供与を「必要がある限り」続けると約束した。ドラギ伊首相も「最も重要なメッセージは、イタリアがウクライナのEU加盟を望んでいることだ」と述べた。

ウクライナのEU加盟については、ポーランド、リトアニアなど旧東欧諸国は当初から支持する一方、フランス、ドイツ、デンマーク、オランダなど西欧諸国は難色を示した経緯がある。理由はロシアを過度に刺激せずにエネルギーを含む、経済依存度を深めることや多文化共存主義の考えが基本にあり、ウクライナは緩衝地帯に置く考えがあったからだ。

ロシアのウクライナ侵攻と戦争の長期化で、西欧諸国はウクライナのEU加盟支持に一変した。ゼレンスキー氏は、ウクライナはEU加盟に向けて準備ができているとし、期待を表明した。ただ、加盟承認にはEU加盟27カ国の全会一致が必要で、ロシアを刺激したくないハンガリーや慎重な態度を示すデンマーク、オランダが支持するかどうかは不明だ。

ショルツ首相は加盟を歓迎しつつも、「多くの加盟条件をクリアするため、時間はかかる」との認識を示したが、ウクライナが2月に加盟申請して4カ月後、仏独伊が支持を表明したのは異例の速さ。EUの本気度を垣間見たとも言える。

この一連の動きに対して、ロシアのプーチン大統領は17日、サンクトペテルブルクで開催中の国際経済フォーラムの席上、EUについては「NATOのような軍事同盟ではない」とし、ウクライナのEU加盟について「反対しない」と容認する考えを示した。ただ、EU加盟国になればEUの補助金に頼る西側諸国の「半植民地になる」との見方も同時に示した。

ウクライナ情勢悪化の長期化が指摘される中、マクロン大統領は「欧州政治共同体」構想を提案している。これはEUから離脱した英国を含め、ウクライナやジョージア、モルドバ、西バルカン諸国、さらにグリーンランドなど、自由と民主主義、人権の価値観を共有する国々が政治や安全保障、エネルギー面などで協力する共同体を提唱するものだ。

デメリットは、ウクライナのような国が共同体に加盟することでEU加盟が遠のき、曖昧になるだけでなく、軍事的に絶対優位のアメリカの支援を受けられない可能性もある。

一方、ウクライナのNATO加盟の可能性も注目されている。11日に、NATOは国防相が集まった会議にウクライナ国防相も招待した。NATO東側の国境に沿った戦力と抑止力を強化する方法について協議し、29日~30日にスペイン・マドリードで開かれるNATO首脳会議で欧州防衛体制強化とウクライナ加盟は最重要課題になる。

ウクライナのNATO加盟は、ロシアが最も受け入れ難いことだが、EUがウクライナのEU加盟に本腰を入れた影響は大きいと言えそうだ。